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【2026年度新制度】重点医師偏在対策支援区域での診療所開業・承継税制支援完全ガイド | 医師の地方開業支援
令和8年度税制改正要望

重点医師偏在対策支援区域での
診療所開業・承継支援税制について

令和8年度税制改正要望に含まれた地方開業支援制度

以下の内容は執筆日時点での情報に基づいています。法令改正等がないか必ずご確認ください。また、内容について細心の注意を払っておりますが、記載の内容をもとに生じたあらゆる損害に関して、弊事務所では一切の責任を負いません。

🎯 この記事のポイント

               
  • 重点医師偏在対策支援区域で診療所を開業・承継する事業者への新しい税制支援制度
  • 対象事業者について
  • 対象となる税目:登録免許税、不動産取得税、固定資産税、都市計画税
  • 税額軽減効果の試算

1. 税制改正要望の重要性

2025年8月 厚生労働省が税制改正要望を公表しました。
厚労省の税制改正要望では、医療に関する多数の税制上の要望が織り込まれているため、医療事業者にとって理解が必須の資料となります。

1.1 税制改正要望とは

毎年の税制改正では、税制改正要望等を踏まえて税制改正大綱が取りまとめられ、税制改正が行われる流れが行われます。
そのため、税制改正要望は今後の税金の動向を踏まえるにあたり重要な資料となります。

1.2 税制改正を踏まえる重要性

以下の試算でわかるとおり、税金が多額に変わってくることとなり、今後の資金計画に重要な影響を及ぼします。したがって、持続的な事業運営を行うにあたり、医療機関運営者は税制改正要望を理解し、事業計画を策定することが重要です。



今回の税制改正要望では、新規の要望事項として重点医師偏在対策地域で承継・開業する診療所への税制上の支援があげられています。
今回の投稿では、本支援について解説を行います。

2. 要望の概要

税制改正要望で明記された要望は以下のとおりです。


<令和8年度主な税制改正要望の概要> 厚生労働省 令和7年8月公表

重点医師偏在対策支援区域承継・開業する診療所に対し以下の税制上の支援を要望する。
①当該区域で承継又は開業する診療所への登録免許税軽減措置
②当該区域で承継又は開業する診療所の一定期間の固定資産税・都市計画税軽減措置
③当該区域で承継又は開業する診療所への不動産取得税軽減措置



本制度の内、対象事業者、軽減措置の概要、税額軽減効果の試算について以下で解説します。

3. 対象事業者


今回の支援策では、重点医師偏在対策支援区域で承継・開業する診療所が対象となっています。

3.1 重点医師偏在対策支援区域

重点医師偏在対策支援区域の考えは、2024年12月に厚労省医政局が策定した、「医師偏在の是正に向けた総合的な対策パッケージ」に詳細記載があります。

<医師偏在の是正に向けた総合的な対策パッケージ(概要)> 
厚生労働省 医政局 地域医療計画課 医師確保等地域医療対策室 令和6年12月25日公表

今後も定住人口が見込まれるが人口減少より医療機関の減少スピードが速い地域等を「重点医師偏在対策支援区域」と設定し、優先的・重点的に対策を進める

重点区域は、厚労省の示す候補区域を参考としつつ、都道府県が可住地面積あたり医師数、アクセス、人口動態等を考慮し、地域医療対策協議会・保険者協議会で協議の上で選定


すなわち、医療機関減少が続く、地方で診療所を承継・開業する事業者が想定対象とわかります。



4. 対象の税目および税額軽減効果の試算

税目 支援内容 適用対象
登録免許税 軽減税率の適用 不動産登記、抵当権設定登記等
固定資産税 一定期間の軽減措置 診療所用固定資産
都市計画税 固定資産税と連動した軽減 診療所用地
不動産取得税 課税標準からの控除など 診療所用不動産

4.1 登録免許税の軽減措置

診療所開設に伴う不動産登記において、通常の税率から軽減された税率が適用される仕組みが想定されます。
通常の土地売買の場合、所有権移転登記は原則税率が2.0%ですが、仮に既に軽減税率が適用されている地域医療構想に従った医療機関再編時の軽減税率1.0%を流用した場合の試算は以下のとおりです。

📊 登録免許税軽減効果試算例

前提条件:診療所用土地の固定資産税評価額 5,000万円

通常税率(2.0%):100万円

軽減税率適用(1.0%の仮定):50万円

軽減効果:50万円

同様に、建物の所有権登記でも軽減税率が適用され、軽減効果はさらに大きくなると想定されます。


4.2 固定資産税・都市計画税の軽減措置

診療所として使用する建物及び土地について、一定期間固定資産税・都市計画税の軽減される仕組みが想定されます。仮に、固定資産税が5年間50%軽減される場合の試算は、以下のとおりです。

📊 固定資産税軽減効果試算例

前提条件:診療所建物・土地の固定資産税評価額 7,000万円

年間固定資産税(標準税率1.4%):98万円

軽減措置適用(1/2軽減の仮定):年間249万円

5年間累計仮定軽減効果:245万円

都市計画税の対象土地・建物でも同様に軽減税率が適用される仕組みの場合、軽減効果はさらに大きくなると想定されます。


4.3 不動産取得税の軽減措置

診療所用不動産取得時の不動産取得税について、課税標準からの控除などによる支援の仕組みが想定されます。
仮に既に控除が適用されている地域医療構想に従った医療機関再編時の課税標準から50%控除を流用した場合の試算は以下のとおりです。

📊 不動産取得税軽減効果試算例

前提条件:診療所固定資産の取得価額 土地5,000万円、建物5,000万円

不動産取得税(土地3.0%、建物4.0%):350万円

軽減措置適用(課税標準1/2軽減の仮定):175万円

軽減効果:175万円

上記は仮定に基づく試算のため、実際に税制改正が行われた際の軽減額とは異なることが想定されますが、税額軽減効果はかなり大きいものと考えられます。

5. まとめ

執筆時点では税制改正要望が出された段階であり、実際の税制改正にどのような形で織り込まれるかは明確ではありません。
しかし、厚労省は初めて令和8年度当初予算で重点医師偏在対策支援区域の診療所整備補助等を要求するなど、地方部における医療提供体制維持に向けた支援を強化しています。
地方部で開業・事業承継を検討する事業者は、これら支援策を活用し、持続的な事業運営を行っていく体制を整えていくことが望まれます。

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