社会福祉法人は、社会福祉法に基づき社会福祉事業を行うことを目的として設立された法人です。
公益性の高さから様々な優遇が受けられる反面、法令による多数の規制が設けられています。
本記事では、
1.社会福祉法人の定義
について、関連法令を引用しながら解説します。
なお、以下の内容は執筆日時点での法令情報に基づいています。法令改正等がないか必ずご確認ください。また、内容について細心の注意を払っておりますが、記載の内容をもとに生じたあらゆる損害に関して、弊事務所では一切の責任を負いません。
1.社会福祉法人の定義
社会福祉法人は、社会福祉事業を行うことを目的として設立された法人です(社会福祉法第22条)。
社会福祉法における社会福祉事業には、第一種社会福祉事業と第二種社会福祉事業の2種類があります。
〇第一種社会福祉事業 (社会福祉法第2条 第2項)
主な第一種社会福祉事業の具体例は、
・救護施設等(生活保護法に基づく事業)
・乳児院、障害児入所施設等(児童福祉法に基づく事業)
・養護老人ホーム、特別養護老人ホーム、軽費老人ホーム(老人福祉法に基づく事業)
・障害者支援施設(障害者総合支援法に基づく事業)
・女性自立支援施設(女性支援新法に基づく事業)
などがあげられます。
上記具体例からわかるように、第一種社会福祉事業はいずれも公益性が非常に高い事業となっており、国、地方公共団体又は社会福祉法人が経営することが原則となっています(社会福祉法第60条)。
さらに、保護施設は地方公共団体、社会福祉法人、日本赤十字社でなければ設置することができません(生活保護法第41条)。
養護老人ホーム(養護)・特別養護老人ホーム(特養)は地方公共団体、地方独立行政法人、社会福祉法人でなければ設置できません(老人福祉法第15条)。
<社会福祉法>
第60条
社会福祉事業のうち、第一種社会福祉事業は、国、地方公共団体又は社会福祉法人が経営することを原則とする。
<生活保護法>
第41条
都道府県、市町村及び地方独立行政法人のほか、保護施設は、社会福祉法人及び日本赤十字社でなければ設置することができない。
<老人福祉法>
第15条
都道府県は、老人福祉施設を設置することができる。
(中略)
4 社会福祉法人は、厚生労働省令の定めるところにより、都道府県知事の認可を受けて、養護老人ホーム又は特別養護老人ホームを設置することができる。
(後略)
〇第二種社会福祉事業 (社会福祉法第2条 第3項)
主な第二種社会福祉事業の具体例は、
・保育園等(児童福祉法に基づく事業)
・幼保連携型認定こども園( 認定こども園法に基づく事業)
・居宅介護事業、老人デイサービス事業等(老人福祉法に基づく事業)
・障害福祉サービス事業等(障害者総合支援法に基づく事業)
などがあげられます。
これら事業については、公益性は高いものの、第一種事業と比べて利用者の方への影響が小さいことが想定され、株式会社等様々な経営主体による運営が可能です。
社会福祉法人は前述の通り、社会福祉事業を行うことを目的としていますが、他の事業を行うことができます。
具体的には、公益事業及び収益事業を社会福祉事業に支障がない範囲で行うことができます(社会福祉法第26条)。
〇公益事業 (社会福祉法人審査基準 第1 2、社会福祉法人審査要領 第1 2)
主な公益事業の具体例は、
・居宅サービス事業、介護予防サービス事業、介護老人保健施設、介護医療院等(介護保険法に基づく事業)
・有料老人ホーム事業
・子育て支援事業
・社会福祉人材等の育成事業
などがあげられます。
〇収益事業 (社会福祉法人審査基準 第1 3、社会福祉法人審査要領 第1 3)
主な収益事業の具体例は、
・貸ビル
・駐車場運営
・売店運営
などがあげられます。
社会福祉事業を目的とする社会福祉法人において、公益事業、収益事業は例外的に認められている事業であり、社会福祉事業に支障がないことが前提(社会福祉法第57条 第3項)で、あくまで社会福祉事業が主たる地位を占める事業である必要があります(社会福祉法人審査基準 第1 1(1))。
また、公益事業で生じた剰余金は社会福祉事業又は他の公益事業に充てること(社会福祉法人審査基準 第1 2(6))、収益事業で生じた収益は社会福祉事業又は公益事業に使用することが求められている(社会福祉法第57条 第2項)点にも留意が必要です。
<社会福祉法>
第26条
社会福祉法人は、その経営する社会福祉事業に支障がない限り、公益を目的とする事業(以下「公益事業」という。)又はその収益を社会福祉事業若しくは公益事業(中略)の経営に充てることを目的とする事業(以下「収益事業」という。)を行うことができる。
第57条
所轄庁は、第二十六条第一項の規定により公益事業又は収益事業を行う社会福祉法人につき、次の各号のいずれかに該当する事由があると認めるときは、当該社会福祉法人に対して、その事業の停止を命ずることができる。
一 当該社会福祉法人が定款で定められた事業以外の事業を行うこと。
二 当該社会福祉法人が当該収益事業から生じた収益を当該社会福祉法人の行う社会福祉事業及び公益事業以外の目的に使用すること。
三 当該公益事業又は収益事業の継続が当該社会福祉法人の行う社会福祉事業に支障があること。
<社会福祉法人審査基準>
第1 1 社会福祉事業
(1) 当該法人の事業のうち主たる地位を占めるものであること。
2 公益事業
(6) 公益事業において剰余金を生じたときは、当該法人が行う社会福祉事業又は公益事業に充てること。
上記のように、社会福祉法人による運営が特別に認められる事業がある一方、様々な事業上の制約が生じてきます。
同様の論点は、事業以外にも様々な場面で生じてくるため、留意が必要です。
次回は、社会福祉法人の優遇と制約について投稿予定です。
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