保育所等の経営情報報告について
2024年6月公布の改正子ども・子育て支援法(以下、「改正法」といいます)が2025年4月に施行されました。
改正法では、児童手当の拡充等様々な給付の拡大と合わせて、毎事業年度の経営情報報告制度が設けられました。
本制度の導入で、施設型給付・地域型保育給付を受けるすべての事業者は、原則として毎年都道府県知事に経営情報を報告する必要があり、保育所等を運営する事業者は準備が必要となります。今回は、制度詳細について以下で解説します。
以下の内容は執筆日時点での情報に基づいています。法令改正等がないか必ずご確認ください。また、内容について細心の注意を払っておりますが、記載の内容をもとに生じたあらゆる損害に関して、弊事務所では一切の責任を負いません。
Ⅰ.経営情報報告の概要
1.対象事業者
報告制度の対象は、施設型給付・地域型機保育給付を受けるすべての施設・事業者となります。(改正法第58条第2項)
2.報告期日
毎事業年度終了後5月以内に報告を行う必要があります。(改正法第58条第2項)
すなわち、3月決算の場合8月までに報告を行う必要があります。
3.開始時期
2024年4月1日以降に始まる事業年度から、報告対象となります。
すなわち、3月決算の場合2025年3月期から報告が必要となります。そのため、2025年8月までに報告が必要となります。
4.報告内容
報告内容としては、以下となります。(施行規則第50条の2、別表3)
①施設基本情報
②収益及び費用:詳細はⅡ.報告情報で解説します。
③職種別人数:詳細はⅡ.報告情報で解説します。
④職員給与情報:詳細はⅡ.報告情報で解説します。
⑤その他:詳細はⅡ.報告情報で解説します。
5.報告方法
WAM NETの提供するここdeサーチシステムにより報告を行います。
6.公表
ここdeサーチシステムにより、施設単位・事業者単位で原則として以下の情報が公表されます。
・人員配置に関する情報
・標準的給与に関する情報
・人件費比率に関する情報
・その他人的資本関連情報(任意報告情報を報告した場合)
<子ども・子育て支援法>
第58条(一部抜粋)
特定教育・保育施設の設置者及び特定地域型保育事業者は、政令で定めるところにより、毎事業年度終了後五月以内に、当該事業年度に係る特定教育・保育施設設置者等経営情報(中略)を教育・保育を提供する施設又は事業所の所在地の都道府県知事に報告しなければならない。
第27条(一部抜粋)
(前略)市町村長(特別区の区長を含む。以下同じ。)が施設型給付費の支給に係る施設として確認する教育・保育施設(以下「特定教育・保育施設」という。)(中略)について、施設型給付費を支給する。
第29条(一部抜粋)
(前略)市町村は、(中略)地域型保育を行う事業者(以下「特定地域型保育事業者」という。)(中略)について、地域型保育給付費を支給する。
<子ども・子育て支援法施行規則>
第50条の2
法第五十八条第二項の内閣府令で定める事項は、別表第三(都道府県又は市町村が設置する特定教育・保育施設等にあっては、同表第二号及び第四号イを除く。(中略))に掲げる項目に関するものとする。
別表第3
一 施設等の名称、所在地その他の基本情報に関する事項
イ 施設等の名称及び所在地
ロ 施設等を運営する法人の種類
ハ 教育・保育施設又は地域型保育事業の種類
ニ 利用定員及び利用小学校就学前子ども数
ホ その他都道府県知事が必要と認める事項
二 施設等の収益及び費用に関する事項
イ 施設等を運営する法人の種類に応じた収益及び費用の内訳
ロ 施設等の収益に対する人件費の割合
ハ その他都道府県知事が必要と認める事項
三 施設等の職員の人員数に関する事項
イ 施設等の職員の職種別人員数
ロ その他都道府県知事が必要と認める事項
四 施設等の職員の給与等に関する事項
イ 施設等の各職員の給与
ロ 施設等の職員の職種別給与
ハ 施設等の職員に係る標準的な給与体系
ニ その他都道府県知事が必要と認める事項
五 その他都道府県知事が必要と認める事項
Ⅱ.報告情報
具体的な報告情報としては、以下が定められています。なお、任意報告項目と記載している事項以外は、基本的に必須報告事項になっています。
1.収益及び費用
収益及び費用では、社福会計基準、学校法人会計基準、企業会計基準など法人形態に応じた数値で報告します。
具体的には、以下の数値を報告することになります。
①収益
②狭義の人件費
③広義の人件費
①収益
一例として、社福会計基準では、
保育事業収益、施設型給付費収益、利用者等利用料収益、私的契約利用料収益などの計上額を報告します。
②狭義の人件費
社福会計基準では人件費計上額、企業会計基準では人件費及び派遣委託費など、直接の人件費を報告します。
③広義の人件費
人件費関連の費用も報告対象となります。一例として、福利厚生費、研修関連費用、職員紹介手数料など人件費関連の費用を含めて報告します。なお、本項目については、任意報告項目となっています。
2.職種別人数
職種別人数として、常勤・非常勤それぞれの基準人数、実際配置人数について職種別に常勤換算で報告します。
集計にあたっては、以下の集計計算を行います。
・複数職種の職員は主たる職種で集計します。
・常勤換算は非常勤職員の労働時間数合計÷正規職員の就業規則等で定めた労働時間で計算します。
3.職員給与情報
職員給与情報として、
①すべての職員の賃金情報
②標準的給与情報
③その他給与基本情報
について報告します。
①すべての職員の賃金情報
処遇改善加算取得情報と合わせて、すべての職員の勤続年数や資格有無、賃金情報などを報告します。
②標準的給与情報
賃金規程等に基づき計算された、常勤保育士/教諭等について、所定労働時間、勤務年数別の月額給料、月額手当、年収目安などを報告します。
勤務年数は2つ以上(1年目は必須)で報告が必要な点に留意が必要です。
③その他給与基本情報
給与支給基準や退職金基準、その他処遇情報など、給与に関する基本情報を報告します。なお、本項目については、任意報告事項となっています。
4.その他情報
有休消化率、離職率などの人的資本関連情報について報告します。なお、本項目については、任意報告事項となっています。
Ⅲ.保育所等の経営情報報告の特徴
同様の施設別の経営情報報告制度は、2023年度より医療法人の運営する病院・診療所、2024年度より介護サービス事業者、保育所等と同じく2025年度より障害福祉サービス事業者対象に開始予定となっています。
保育所等の経営情報報告は、他制度と比較して以下の特徴があげられます。
・標準的給与情報の報告、公表が行われる点
→求職者の職場選択支援、キャリア検討支援の観点が反映された制度設計になっています。
・個別施設ごとの情報公表が行われる点
→保護者の施設選択支援の観点が反映された制度設計になっています。
すなわち、他の経営情報報告制度では診療報酬や介護報酬等の公定価格検討の観点が重視されている一方、保育所等の経営情報報告制度では、保護者や求職者など広いターゲットを対象とした情報公開制度の設計されている点が特徴となっています。
経営情報報告は当年度だけでなく、来年度以降も継続した報告が求められています。一方、実績報告・請求書、決算書、賃金規程等のデータを事前に準備しておくことでスムーズな報告を行うことができます。
経営情報報告で求められる情報は、施設の内部管理や経営管理上リアルタイムで把握することが重要な情報が大半です。経営情報報告を起点として情報がスムーズに取得できる体制の整備が望まれます。
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