<2025年9月5日更新>
2025年8月に開催された説明会で公表された新規情報を、以下の投稿でアップデートしていますのでご覧ください
以下の情報は、執筆日時点の情報である点にご留意ください
2025年1月の厚生労働省 第145回社会保障審議会 障害者部会において、障害福祉サービス事業者対象に毎事業年度の経営情報報告制度が導入される点明記されました。
本制度の導入で、すべての障害福祉サービス事業者は、原則として毎年都道府県知事に経営情報を報告する必要があり、障害福祉サービスを提供する事業者は報告に向けた準備が必要となります。今回は、制度詳細について以下で解説します。
なお、執筆日時点では、制度概要の公表となっており、制度詳細やQ&Aなどは今後通達等発出が予想されるため、留意が必要です。
以下の内容は執筆日時点での情報に基づいています。法令改正等がないか必ずご確認ください。また、内容について細心の注意を払っておりますが、記載の内容をもとに生じたあらゆる損害に関して、弊事務所では一切の責任を負いません。
Ⅰ.経営情報報告の概要
1.対象事業者
報告制度の対象は、原則すべて障害福祉サービスを提供する事業者となります。
2.報告期日
毎事業年度終了後3月以内に報告を行う必要があります。
ただし、制度導入初年度は2026年3月までが報告期限となっています。
3.報告内容
報告内容としては、以下となります。
①施設基本情報
②収益及び費用:詳細はⅡ.報告情報で解説します。
③職種別人数:詳細はⅡ.報告情報で解説します。
④職種別給与情報:詳細はⅡ.報告情報で解説します。
⑤その他:詳細はⅡ.報告情報で解説します。
4.報告方法
WAM NETの提供する経営情報データベースより報告を行います。
これは、既に運用が始まっている、障害福祉サービス等情報公表システムに実装される予定です。
5.公表
WAM NETにより、施設単位・事業者単位で原則として以下の情報が追加公表されます。
・一人当たり賃金(任意報告情報を報告した場合)
また、従来の情報公表制度同様に、
・施設の基本情報
・施設の財務状況
・職種別人数
・その他運営情報
などの公表は継続されるため、追加で情報公表が行われることになります。
Ⅱ.報告情報
具体的な報告情報としては、以下が定められています。
1.収益及び費用
収益及び費用は、経営情報報告制度用に定められた形式で報告します。
従来も拠点別の事業活動計算書(PL)、資金収支計算書(CF、CS)、貸借対照表(BS)が報告対象で、WAM NET上で報告されたPDFを公表する制度が導入されています。
しかし、義務にも関わらず公表率が低迷している点、PDFのため他拠点比較が難しい点などの問題点が指摘されており、今回の経営情報報告制度で収益及び費用情報が報告対象となる見込みです。
また、本制度導入にあたり、事業者が適用している会計基準(社福会計基準や企業会計基準など)から、報告様式にデータ変換するツールが公表される予定です。
2.職種別人数
職種別人数については、従来から報告対象で、WAM NET上で公表する制度が導入されています。
経営情報報告制度においても、同様に報告・公表対象となる予定です。
3.職種別給与情報
任意報告事項として、職種別給与情報の報告が定められる予定です。
任意事項ではありますが、職種別給与情報の報告・公表を行うことで、処遇改善観点の情報集計はもちろんですが、求職者に対する職場選択支援への情報活用も想定されます。
報告事項の詳細は別途定められる予定ですが、同時期に制度導入された保育所等の経営情報報告では以下の情報の報告が求められています。
・すべての職員の賃金情報:勤続年数や資格有無、賃金情報など
・標準的給与情報:所定労働時間、勤務年数別の月額給料、月額手当、年収目安など
・その他給与基本情報:給与支給基準や退職金基準、その他処遇情報など
4.その他情報
その他情報として、任意報告事項として1人当たり賃金情報が求められます。
また、従来同様にサービス関連情報なども報告が求められる予定です。
1人当たり賃金情報は、3.職種別給与情報に記載の処遇改善データ集計や求職者に対する職場選択支援への情報活用などの想定で報告・公表されます。
また、設置主体、職種、勤続年数等がわかるような形での公表や、法人単位での公表を行うことが可能な公表制度が導入される予定です。
Ⅲ.障害福祉サービスの経営情報報告の特徴
同様の施設別の経営情報報告制度は、2023年度より医療法人の運営する病院・診療所、2024年度より介護サービス事業者、障害福祉サービスと同じく2025年度より保育所等対象に開始予定となっています。
障害福祉サービスの経営情報報告は、他制度と比較して以下の特徴があげられます。
・収益及び費用の報告形式変換ツールが公表される点
→様々な事業者が運営する障害福祉サービスの特色を反映し、事業者負担軽減が見込まれる制度設計になっています。
・既存の障害福祉サービス等情報公表システムが活用される点
→障害福祉サービスは以前から拠点情報の報告・公表制度が導入されています。既存制度を活用した経営情報報告制度になる予定のため、これまでの報告フローから大きな事務負担追加は生じないことが想定されます。
障害福祉サービス事業者対象の経営情報報告制度では、事業者負担軽減の措置が取られる見込みで、本制度導入による事業者体制に大きな影響は生じないことが想定されます。
毎年の報告が必要となるため、早い段階からデータの準備等を行うことが望まれます。
詳細や報告代行のご依頼等お問い合わせは、お気軽に以下からご連絡ください。