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社会福祉法人は、社会福祉法に基づき社会福祉事業を行うことを目的として設立された法人です。
公益性の高さから様々な優遇が受けられる反面、法令による多数の規制が設けられています。
本記事では、
3.社会福祉法人の特例と優遇
の中でも各種税金の優遇措置と社会福祉法人特有の論点について、関連法令を引用しながら解説します。
なお、以下の内容は執筆日時点での法令情報に基づいています。法令改正等がないか必ずご確認ください。また、内容について細心の注意を払っておりますが、記載の内容をもとに生じたあらゆる損害に関して、弊事務所では一切の責任を負いません。

3.社会福祉法人の特例と優遇(税金)

社会福祉法人は、前回までに記載したとおり、多数の規制が設けられています。
これは、社会福祉事業が公益性の高い事業であり、社会福祉法人には多数の特例や優遇措置が設けられている点の裏返しでもあります。
今回は、前回に引き続き各種税金に関する社会福祉法人に設けられている主な特例や優遇措置について各種関連法令を流用しながら解説します。

<参考>
法人税:社会福祉法人について-法人税 その3
消費税:社会福祉法人について-消費税 その4

〇税務上の優遇措置

今回は、前回までに解説した法人税・消費税以外の税金に関する社会福祉法人特有の論点及び優遇措置について解説します。

Ⅲ.固定資産税

社会福祉法人は、固定資産関連税金においても優遇措置が設けられています。
具体的には、一部事業について、①事業用資産の不動産取得税の非課税②事業用資産の固定資産税の非課税が定められています。
これは、社会医療法人の規定と同様の優遇措置となります。

<参考>医療法人について-医療法 その1

①事業用資産の不動産取得税の非課税 (地方税法第73条の4)

社会福祉法人が行う主に以下の事業用不動産について、不動産取得税が非課税となります。
社会福祉事業用不動産
以下の施設の用に供する不動産

<地方税法> ※主なものを抜粋
第73条の4
道府県は、次の各号に規定する者が不動産をそれぞれ当該各号に掲げる不動産として使用するために取得した場合には、当該不動産の取得に対しては、不動産取得税を課することができない。
三 (前略)社会福祉法人がその設置する幼稚園において直接保育の用に供する不動産(後略)
三の二 (前略)社会福祉法人(中略)がその設置する看護師、准看護師、歯科衛生士その他政令で定める医療関係者の養成所において直接教育の用に供する不動産
四 社会福祉法人(中略)が生活保護法第三十八条第一項に規定する保護施設の用に供する不動産で政令で定めるもの
四の二 社会福祉法人(中略)が児童福祉法第六条の三第十項に規定する小規模保育事業の用に供する不動産
四の三 社会福祉法人(中略)が児童福祉法第七条第一項に規定する児童福祉施設の用に供する不動産で政令で定めるもの
四の四 (前略)社会福祉法人(中略)が就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律(平成十八年法律第七十七号)第二条第六項に規定する認定こども園の用に供する不動産
四の五 社会福祉法人(中略)が老人福祉法第五条の三に規定する老人福祉施設の用に供する不動産で政令で定めるもの
四の六 社会福祉法人が障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律第五条第十一項に規定する障害者支援施設の用に供する不動産
四の七 第四号から前号までに掲げる不動産のほか、社会福祉法人その他政令で定める者が社会福祉法第二条第一項に規定する社会福祉事業(同条第三項第一号の二に掲げる事業(筆者注:認定生活困窮者就労訓練事業、別途課税標準価格が1/2となる特例あり)を除く。)の用に供する不動産で政令で定めるもの 

事業用資産の固定資産税の非課税 (地方税法第348条)

社会福祉法人が行う主に以下の事業用不動産について、固定資産税が非課税となります。
社会福祉事業用不動産
以下の施設の用に供する不動産
①不動産取得税の対象事業や施設と重複しており、不動産取得税が非課税の事業用不動産は、固定資産税も非課税となります。

<地方税法> ※主なものを抜粋
第248条
2 固定資産税は、次に掲げる固定資産に対しては課することができない。ただし、固定資産を有料で借り受けた者がこれを次に掲げる固定資産として使用する場合には、当該固定資産の所有者に課することができる。
九 (前略)社会福祉法人がその設置する幼稚園において直接保育の用に供する固定資産(後略)
九の二 (前略)社会福祉法人(中略)がその設置する看護師、准看護師、歯科衛生士その他政令で定める医療関係者の養成所において直接教育の用に供する固定資産
十 社会福祉法人(中略)が生活保護法第三十八条第一項に規定する保護施設の用に供する固定資産で政令で定めるもの
十の二 社会福祉法人(中略)が児童福祉法第六条の三第十項に規定する小規模保育事業の用に供する固定資産
十の三 社会福祉法人(中略)が児童福祉法第七条第一項に規定する児童福祉施設の用に供する固定資産で政令で定めるもの(次号に該当するものを除く。)
十の四 (前略)社会福祉法人(中略)が就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律第二条第六項に規定する認定こども園の用に供する固定資産
十の五 社会福祉法人(中略)が老人福祉法第五条の三に規定する老人福祉施設の用に供する固定資産で政令で定めるもの
十の六 社会福祉法人が障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律第五条第十一項に規定する障害者支援施設の用に供する固定資産
十の七 第十号から前号までに掲げる固定資産のほか、社会福祉法人その他政令で定める者が社会福祉法第二条第一項に規定する社会福祉事業(同条第三項第一号の二に掲げる事業(筆者注:認定生活困窮者就労訓練事業、別途課税標準価格が1/2となる特例あり)を除く。)の用に供する固定資産で政令で定めるもの

Ⅳ.印紙税

社会福祉法人は、印紙税においても優遇措置が設けられています。
具体的には、以下について、印紙税が非課税となっています。

A:介護保険制度に関する利用者との間の契約書(H12年3月17日事務連絡)
B:社会福祉法人が発行する領収書(印紙税法第5条第1項、別表第1 7 17、タックスアンサーNo.7125)
C:生活困窮者に対する生活福祉資金貸付契約書(印紙税法第5条第3項、別表第3)
すなわち、これら契約書や領収書については、収入印紙の貼付等が不要となっています。

A:<事務連絡>※一部抜粋
介護サービス事業者等と利用者の間で作成する契約書及び介護サービス事業者等が発行する領収証等に係る印紙税の取扱い(平成12年3月17日)
回答
介護保険制度下において作成されるこれらの契約書は、原則として、印紙税の課税文書には該当しません。なお、前記の各種サービスを複合的に組み合わせた契約書を作成した場合も同様の取扱いとなります。(後略)

B、C:<印紙税法> 
第5条
別表第一の課税物件の欄に掲げる文書のうち、次に掲げるものには、印紙税を課さない。
一 別表第一非課税物件の欄に掲げる文書
(中略)
三 別表第三の上欄に掲げる文書で、同表の下欄に掲げる者が作成したもの

別表第一 課税物件表 ※一部抜粋
6
番号:十七
課税文書:1 売上代金に係る金銭又は有価証券の受取書、2 金銭又は有価証券の受取書で1に掲げる受取書以外のもの
非課税物件:2 営業(中略)に関しない受取書

別表第三 非課税文書の表 ※一部抜粋
文書名:社会福祉法(昭和二十六年法律第四十五号)第二条第二項第七号(定義)に規定する生計困難者に対して無利子又は低利で資金を融通する事業による貸付金に関する文書
作成者:社会福祉法人その他当該資金を融通する者又は当該資金の融通を受ける者

C:<タックスアンサー> ※一部抜粋
No.7125 営業に関しない受取書
概要
(2) 公益社団法人・公益財団法人などの公益法人の行為は、すべて営業になりません。
また、一般社団法人・一般財団法人などで、法令の規定または定款の定めにより利益金または剰余金の配当または分配をすることができないものの行為営業になりません

※筆者注:社会福祉法人は剰余金の配当または分配ができない組織形態のため、本要件に該当する

これまで見てきたように、社会福祉法人は様々な規制の反面、税金の優遇が幅広く設けられています。
また、税金ごとに多数の通達等が既に発出されているだけでなく、新たな通達等も発出されておりアップデートも重要となります。
税務顧問等の契約を検討するにあたっては、高度な専門性を有しており、最新情報を提供できる事務所を選ばれることをおすすめいたします。

詳細については、お気軽に以下からご連絡ください。

前回ブログ:社会福祉法人について-消費税 その4