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外来医師過多区域とは|新規開業への影響と医療法・診療報酬上の制約を解説 | 辻本公認会計士事務所

令和8年4月1日施行の改正医療法により、外来医師過多区域での新規開業に対する規制が強化されます。


外来医師過多区域に指定された地域で無床診療所を開設する場合、開業6か月前の事前届出が義務化され、地域で不足する医療機能の提供を要請されることになります。
要請に従わない場合は、保険医療機関の指定期間短縮等の制度が導入されます。
さらに、令和8年度診療報酬改定においても、一部の算定が不可と明記されました。

本記事では、厚生労働省の各種資料に基づき、外来医師過多区域の概要、医療法・診療報酬上の制約、新規開業を検討する医師が対応すべき事項について解説します。

【免責事項】以下の内容は執筆日時点での情報に基づいています。法令改正等がないか必ずご確認ください。また、内容について細心の注意を払っておりますが、記載の内容をもとに生じたあらゆる損害に関して、弊事務所では一切の責任を負いません。

1. 外来医師過多区域の概要

1-1. 外来医師過多区域とは

外来医師過多区域とは、改正医療法第30条の18の6に基づき、都道府県知事が指定する、外来医師が特に多い地域のことを指します。

「医師偏在の是正に向けた総合的な対策パッケージ」(令和6年12月25日公表)において、外来医師偏在指標が一定数値を超える地域を外来医師過多区域として設定し、新規開業希望者に対して地域で不足する医療機能の提供を要請できる仕組みが公表されました。


具体的には、以下の指定基準が示されています。

【外来医師過多区域の指定基準】

以下の両方の基準に該当する二次医療圏が、国が提示する候補区域

  • 外来医師偏在指標が「全国平均値+標準偏差の1.5倍」以上
  • 可住地面積あたり診療所数が上位10%

都道府県知事は、候補となる二次医療圏区域のうち、特に外来医師が多い地域等を指定します。

医療法(令和8年4月1日施行)
第30条の18の6
都道府県知事は、第三十条の四第二項第十四号に規定する区域(筆者注:二次医療圏)であつて、外来医療を行う医師の数の、外来患者の数に対する比率に相当するものとして厚生労働省令で定めるところにより算定した率その他厚生労働省令で定める指標が、厚生労働省令で定める基準を超えるものがある場合において、当該区域のうち、特に地域外来医療を確保する必要がある区域があると認めるときは、当該区域を指定するものとする。


従来から設定されている、外来医師多数区域(外来医師偏在指標の上位33.3%に該当する二次医療圏)とは異なる概念となっています。
外来医師過多区域は、外来医師多数区域のうち外来医師が集中している地域が対象となっています。


1-2. 候補区域一覧(9箇所)

厚生労働省「第9回地域医療構想及び医療計画等に関する検討会」(令和8年1月16日)資料によると、以下9箇所の二次医療圏が、国が提示する外来医師過多区域の候補となっています。

都道府県二次医療圏名外来医師偏在指標可住地面積あたり
診療所数
(対全国値比)
該当市区町村
東京都区中央部7.2252.90千代田区、中央区、港区、文京区、台東区
東京都区西部4.2828.20新宿区、中野区、杉並区
東京都区西南部3.5626.98目黒区、世田谷区、渋谷区
京都府京都・乙訓2.548.52京都市、向日市、長岡京市、大山崎町
大阪府大阪市1.9419.42大阪市
福岡県福岡・糸島1.865.95福岡市、糸島市
東京都区南部1.8215.37品川区、大田区
東京都区西北部1.7418.47豊島区、北区、板橋区、練馬区
兵庫県神戸1.585.73神戸市

出典:第9回地域医療構想及び医療計画等に関する検討会(令和8年1月16日)資料3

【ポイント】

上記は国が提示する候補区域であり、実際の外来医師過多区域の指定は都道府県知事が行います。
候補区域の中で、人口あたり医師数や可住地面積あたり診療所数等が特に高い市区町村・地区がある場合、その市区町村・地区単位で指定されることも検討されています。

2. 医療法改正|事前届出から勧告・公表まで

2-1. 事前届出義務の内容

外来医師過多区域に指定された区域で無床診療所を開設する場合、開業日の6か月前までに都道府県知事への届出が義務付けられます。

【事前届出の記載事項】 ※通常の開設届と異なる内容のみ抽出

  • 地域外来医療の提供に関する意向
  • 地域外来医療を提供する意向がある場合、提供する予定の地域外来医療の内容(提供の頻度・時期を含む)
  • 地域外来医療を提供しない場合は、その理由

医療法(令和8年4月1日施行)
第30条の18の6
3 第一項(筆者注:外来医師過多区域)の指定を受けた区域において、診療所(医業を行う場所であつて、患者を入院させるための施設を有しないものに限る。)を開設しようとする者は、やむを得ない場合として厚生労働省令で定める場合を除き、当該診療所を開設する日の六月前までに、厚生労働省令で定めるところにより、当該区域における地域外来医療の提供に関する意向その他の厚生労働省令で定める事項を都道府県知事に届け出なければならない


ただし、親が開設していた診療所について親の死亡により子が急遽承継する場合等、予期せず前任の開設者が不在となり事業承継が必要となった場合に限り、事前届出義務が猶予されます。ただし、事業承継後に届出を行い、通常のフローに従った対応が必要です。

出典:第8回地域医療構想及び医療計画等に関する検討会(令和7年12月12日)資料2


2-2. 協議の場への参加と要請

事前届出において地域外来医療を提供しない意向を示した場合、都道府県知事は外来医療の協議の場への参加を求め、不足する医療機能の提供を要請できます。

【協議のポイント】

  • 参加対象者:事前届出をした者に加え、事前届出義務があるが届出を行わなかった者、猶予対象に該当する者も必要に応じて参加対象となる
  • 説明を求められる内容:地域外来医療を提供しない理由、及び当該診療所で提供する予定の医療の具体的な内容
  • 開催形式:原則対面又はオンライン(やむを得ない場合は持ち回り・書面も可)

医療法(令和8年4月1日施行)
第30条の18の6
4 都道府県知事は、第一項の指定を受けた区域において、前項の届出をした者その他厚生労働省令で定める者(以下この条において「届出者等」という。)が当該区域における地域外来医療の提供をしない意向を示しているときは、当該届出者等に対し、前条第一項に規定する協議の場における協議に参加し、当該提供をしない理由その他の厚生労働省令で定める事項(以下この条において「理由等」という。)について説明をするよう求めることができる


協議を踏まえ、やむを得ない理由と認められない場合は、都道府県知事から期限を定めて地域外来医療の提供を要請されます。
期限内に回答がない場合、地域外来医療を提供する意向ありと回答しない場合は、以下の措置が行われます。

2-3. 勧告・公表

要請に応じない医療機関については、以下の措置が講じられます。

【段階的な措置】

  • 都道府県医療審議会への出席・理由等の説明の求め:要請に従わない開業者に対して、都道府県知事が出席と説明を求める
  • 勧告:理由等がやむを得ないものと認められない場合、都道府県医療審議会の意見を聴いて勧告
  • 公表:勧告に従わない場合、その旨を公表
  • 厚生労働大臣への通知:要請に応じなかった場合、勧告をした場合、勧告に従わなかった場合、都道府県知事から厚生労働大臣へ通知

出典:改正医療法第30条の18の6第6項~第11項


上記の措置の他に、保険医療機関指定期間短縮の措置が行われます。詳細は、3-1. 指定期間短縮をご参照ください。

2-4. 対応フロー全体像

開業6か月前からの対応フローの全体像は以下の通りです。

【外来医師過多区域における新規開業フロー】

1 外来医師過多区域・地域外来医療の公表確認 開業検討開始時
都道府県が公表する外来医師過多区域、地域で不足する医療機能(地域外来医療)の内容を確認
2 都道府県への事前相談 開業6か月前まで
事前届出に関し、都道府県に事前相談を実施
3 事前届出の提出 開業6か月前
地域外来医療の提供に関する意向等を記載した事前届出を都道府県知事に提出
4 協議の場への参加・要請 開業6か月前~開業まで
地域外来医療を提供しない意向の場合、外来医療の協議の場への参加を求められ、不足する医療機能の提供を要請される
A 要請に応じる場合
地域外来医療を提供 → 保険医療機関の指定期間は通常の6年
B 要請に応じない場合
保険医療機関の指定期間が3年に短縮。さらに、都道府県医療審議会への出席・説明の求め → 勧告 → 公表の段階的措置へ

出典:第8回地域医療構想及び医療計画等に関する検討会(令和7年12月12日)資料2、第9回同検討会(令和8年1月16日)資料3を基に作成

3. 健康保険法上の制約|保険医療機関の指定期間短縮

3-1. 指定期間短縮

合わせて改正される健康保険法により、外来医師過多区域における要請に応じない医療機関について、保険医療機関の指定期間を短縮できる仕組みが導入されます。

指定期間該当する類型
6年
(通常)
要請に応じた場合
3年要請を受けて期限までに応じなかった診療所、勧告を受けた診療所、再指定時に勧告に従わない状態が続いた場合(2度目の指定
2年再々指定時以降に、勧告に従わない状態が続いた場合(3度目の指定以降

健康保険法(令和8年4月1日施行)
第68条の2
厚生労働大臣は、診療所の開設者又は管理者が医療法第三十条の十八の六第六項の規定による都道府県知事の要請を受け、これに応じなかった場合、同条第九項の規定による都道府県知事の勧告を受けた場合又は当該勧告を受け、これに従わなかった場合には、前条第一項の規定にかかわらず、厚生労働省令で定めるところにより、第六十三条第三項第一号の指定を行うに当たっては、三年以内の期限を付することができる。


【重要ポイント】

指定期間の短縮は、開業後の経営に直接的な影響を及ぼします。
指定期間が短縮されると、短期間での再指定審査が必要となるほか、後述する追加的な措置の対象となります。

出典:第8回地域医療構想及び医療計画等に関する検討会(令和7年12月12日)資料2


3-2. 指定期間短縮に伴うその他の措置

保険医療機関の指定期間が短縮された場合、以下の追加的な措置が講じられることが検討されています。

【指定期間短縮に伴う措置(例)】

  • 医療機関名等の公表:医療機能情報提供制度(ナビイ)において、地域外来医療の提供の有無及び内容、医療法による要請又は勧告の有無が報告・公表される
  • 保健所等による確認:地域外来医療の提供状況について保健所等が確認
  • 補助金の不交付:一定の補助金が不交付となる可能性
  • 都道府県医療審議会又は外来医療の協議の場への毎年1回の参加:指定期間3年の間、毎年参加を求められる

出典:「医師偏在の是正に向けた総合的な対策パッケージ」(令和6年12月25日厚生労働省公表)、第8回地域医療構想及び医療計画等に関する検討会(令和7年12月12日)資料2

4. 診療報酬上の制約|令和8年度診療報酬改定

4-1. 算定不可の項目

令和8年度診療報酬改定において、医療提供の要請に応じず、保険医療機関の指定が3年以内とされた医療機関は、以下の項目が算定不可となります。

【算定不可の項目及び点数(令和6年度)】

  • 機能強化加算:80点
  • 地域包括診療加算:(1)28点、(2)21点
  • 地域包括診療料:(1)1,660点、(2)1,600点
  • 小児かかりつけ診療料:初診時641~769点、再診時447~576点
また、在宅療養支援診療所の届出が不可と明記され、当該区分での往診料等の算定が不可となります。

【診療報酬上の留意点】

対象医療機関では、内科系診療所を中心として、各種加算の算定が不可となるため診療報酬上も運営に影響が生じてきます。

5. 新規開業を検討する医師が対応すべき事項

5-1. 開業前の確認事項

外来医師過多区域での開業を検討している医師は、以下の事項を早期に確認することが重要です。


また、事前届出は開業日の6か月前が期限であり、計画的な準備が必要です。

【開業前に確認すべき事項】

  • 外来医師過多区域に該当するかの確認:都道府県知事による外来医師過多区域の指定状況を確認する
  • 地域外来医療の内容:当該区域で要請される地域外来医療の具体的な内容(初期救急、在宅医療、公衆衛生等)を確認する
  • 開設予定診療所での対応可否の確認:当該区域で要請される地域外来医療の提供可否を検討する

5-2. 運営計画への影響

外来医師過多区域で地域外来医療を提供しない場合、運営計画にも大きな影響を及ぼします。

【経営計画上の考慮事項】

  • 指定期間短縮リスク:保険医療機関の指定期間が3年に短縮された場合の運営への影響検討
  • 診療報酬等への影響:要請・勧告に従わない場合の診療報酬の試算を行う
  • 信用・評判への影響:医療機能情報提供制度による要請・勧告の有無の公表、勧告に従わない場合の医療機関名の公表が、患者からの信頼や紹介元医療機関との関係に与える影響を検討する

6. まとめ|制度を踏まえた計画的な開業準備の重要性

令和8年4月1日施行の改正医療法により、外来医師過多区域での新規開業には、事前届出義務を起点とした一連の規制が導入されます。

【制度改正の要点まとめ】

  • 都道府県知事により、外来医師過多区域が指定される
  • 無床診療所の開業6か月前に事前届出が義務化
  • 地域で不足する医療機能(初期救急、在宅医療、公衆衛生等)の提供を要請される
  • 要請に応じない場合は保険医療機関の指定期間が6年から3年に短縮
  • 診療報酬でも算定不可項目が生じる
  • 医療機能情報提供制度による要請・勧告の有無の公表、補助金不交付等の追加措置が行われる

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