医療法人会計基準について~その5(附属明細表)~
前回までの記事では、医療法人会計基準の具体的な会計処理について解説しました。
今回は、医療法人会計基準における附属明細表について解説します。
(参考)前回記事:医療法人会計基準について~その4(積立金の会計処理)~
附属明細表は、貸借対照表や損益計算書等を補完する重要な書類であり、医療法人の財政状態や経営成績をより詳細に理解するために不可欠な情報を提供します。
医療法人会計基準を適用する医療法人は、会計基準上5つの附属明細表の作成が求められています。
なお、これら附属明細表とは別に、関係事業者との取引報告書等医療法上作成が求められている書類の作成が求められる点に留意が必要です。
1. 附属明細表の概要
1-1. 附属明細表とは
附属明細表は、貸借対照表及び損益計算書等の内容を補足し、医療法人の財政状態及び経営成績をより明瞭に表示するために作成される明細書類です。
医療法人会計基準適用上の留意事項並びに財産目録、純資産変動計算書及び附属明細表の作成方法に関する運用指針(以下、「運用指針」といいます)において、附属明細表の種類は以下のとおり規定されています。
<運用指針>
27 附属明細表について
附属明細表の種類は、次に掲げるものとする。
① 有形固定資産等明細表
② 引当金明細表
③ 借入金等明細表
④ 有価証券明細表
⑤ 事業費用明細表
1-2. 附属明細表の様式
附属明細表の様式は、社会医療法人債を発行する社会医療法人を除き、運用指針で定める様式第五号から様式第九の二号によることとされています。
【附属明細表の概要】
- 5つの明細表から構成される
- 医療法人会計基準上作成が求められる
- 様式は運用指針で規定されている
2. 有形固定資産等明細表
2-1. 有形固定資産等明細表の概要
有形固定資産等明細表は、固定資産の取得、処分、減価償却等の状況を明らかにするために作成されます。
運用指針様式第五号に基づき、有形固定資産、無形固定資産及びその他の資産に3区分し、3区分を貸借対照表の資産種類(建物等)に区分して、以下の情報を記載します。
2-2. 記載項目
| 記載項目 | 内容 |
|---|---|
| 資産の種類 | 貸借対照表に掲げられている科目の区分 |
| 前期末残高 | 前期末時点での取得原価合計 |
| 当期増加額 | 当期中に取得した資産の取得原価合計 |
| 当期減少額 | 当期中に処分した資産の取得原価合計 |
| 当期末残高 | 当期末時点での取得原価合計 |
| 当期末減価償却累計額 | 当期末時点での(減価)償却累計額 |
| 当期償却額 | 当期の減価償却費合計 |
| 差引当期末残高 | 帳簿価額(当期末残高-当期末減価償却累計額) |
2-3. 有形固定資産等明細表の留意点
有形固定資産等明細表では、以下の点に留意が必要です。
合併・災害等特殊な増減
<運用指針様式第五号 注4>
合併、贈与、災害による廃棄、滅失等の特殊な事由で増加若しくは減少があった場合又は同一の種類のものについて資産の総額の1%を超える額の増加は、その事由を欄外に記載すること。若しくは減少があった場合(ただし、建設仮勘定の減少のうち各資産科目への振替によるものは除く。)
重要性による記載の省略
<運用指針様式第五号 注6>
有形固定資産又は無形固定資産の金額が資産の総額の1%以下である場合又は有形固定資産及び無形固定資産の当該会計年度におけるそれぞれの増加額及び減少額がいずれも当該会計年度末における有形固定資産又は無形固定資産の総額の5%以下である場合には、有形固定資産又は無形固定資産に係る記載中「前期末残高」、「当期増加額」及び「当期減少額」の欄の記載を省略することができる。なお、記載を省略した場合には、その旨注記すること。
【有形固定資産等明細表】
- 有形固定資産、無形固定資産、その他の資産に3区分し、それぞれ貸借対照表科目に種類を区分
- 前期末残高、当期増加額、当期減少額、当期末残高の記載は取得原価ベース
- 同一種類資産総額1%超の特殊な増減は欄外に事由を記載
- 重要性が低い場合は記載の一部省略が可能だが注記が必要
3. 引当金明細表
3-1. 引当金明細表の概要
引当金明細表は、引当金の設定及び取崩しの状況を明らかにするために作成されます。
運用指針様式第六号に基づき、貸借対照表科目区分(退職給付引当金等)に対応させて、引当金の状況を記載します。
3-2. 記載項目
| 記載項目 | 内容 |
|---|---|
| 区分 | 貸借対照表に計上されている科目の区分 |
| 前期末残高 | 前期末の貸借対照表計上額 |
| 当期増加額 | 当期の引当金繰入額 |
| 当期減少額(目的使用) | 設定目的の支出または事実の発生による取崩額 |
| 当期減少額(その他) | 目的使用以外の理由による減少額 |
| 当期末残高 | 当期末の貸借対照表計上額 |
3-3. 引当金明細表の留意点
引当金明細表では、以下の点に留意が必要です。
前期末及び当期末計上されている引当金が対象
<運用指針様式第六号 注1>
前期末及び当期末貸借対照表に計上されている引当金について、設定目的ごとの科目の区分により記載すること。
その他の減少理由の注記
<運用指針様式第六号 注3>
「当期減少額」の欄のうち「その他」の欄には、目的使用以外の理由による減少額を記載し、減少の理由を注記すること。
【引当金明細表】
- 前期末及び当期末に計上されている引当金が対象
- 引当金の減少は目的使用とその他に区分し、その他減少の理由について注記が必要
4. 借入金等明細表
4-1. 借入金等明細表の概要
借入金等明細表は、借入金等有利子負債の状況を明らかにするために作成されます。
運用指針様式第七号に基づき、短期借入金、長期借入金(1年以内返済予定)、長期借入金(1年以内返済予定以外)、金利の負担を伴うその他負債に区分して記載します。
4-2. 記載項目
| 記載項目 | 内容 |
|---|---|
| 区分 | 短期借入金、長期借入金(1年以内返済予定)、長期借入金(1年以内返済予定以外)、その他の有利子負債 |
| 前期末残高 | 前期末の借入金残高 |
| 当期末残高 | 当期末の借入金残高 |
| 平均利率 | 加重平均利率(%) |
| 返済期限 | 最終返済予定日 |
4-3. 借入金等明細表の留意点
無利子・特別条件借入金
<運用指針様式第七号 注2>
重要な借入金で無利息又は特別の条件による利率が約定されているものがある場合には、その内容を欄外に記載すること。
返済予定額の注記
<運用指針様式第七号 注5>
長期借入金(1年以内に返済予定のものを除く。)及びその他の有利子負債については、貸借対照表日後5年内における1年ごとの返済予定額の総額を注記すること。
【借入金等明細表】
- 借入金及び有利子負債の残高・利率・返済期限を記載する
- 利率は加重平均利率を記載する
- 無利子等特別な条件の重要な借入金は内容を欄外に記載する
5. 有価証券明細表
5-1. 有価証券明細表の概要的
有価証券明細表は、保有する有価証券の内容を明らかにするために作成されます。
運用指針様式第八号に基づき、貸借対照表上の区分により流動資産とその他の資産の2区分し、さらに満期保有目的債券とその他有価証券に区分して、以下の情報を記載します。
5-2. 記載項目
債券の場合
| 記載項目 | 内容 |
|---|---|
| 銘柄 | 債券の銘柄 |
| 券面総額 | 額面金額 |
| 貸借対照表価額 | 貸借対照表計上額 |
その他有価証券の場合
| 記載項目 | 内容 |
|---|---|
| 種類及び銘柄 | 有価証券の種類と銘柄 |
| 口数等 | 保有口数・株数 |
| 貸借対照表価額 | 貸借対照表計上額 |
5-3. 有価証券明細表の留意点
重要性による記載省略
<運用指針様式第八号 注3>
銘柄別による有価証券の貸借対照表価額が医療法人の純資産額の1%以下である場合には、当該有価証券に関する記載を省略することができる。
【有価証券明細表】
- 流動資産とその他の資産に2区分し、さらに満期保有目的債券とその他有価証券に区分して記載する
- 銘柄別有価証券の貸借対照表計上額が純資産額の1%以下の場合、記載省略が可能
6. 事業費用明細表
6-1. 事業費用明細表の概要
事業費用明細表は、事業費用の内訳を明らかにするために作成されます。
運用指針27において、事業費用明細表は2つの様式から選択できることが規定されています。
6-2. 様式の選択
様式第九の一号:費用区分別
中区分科目別に、損益計算書費用区分に対応して、本来業務事業費用(事業費および本部費)、附帯業務事業費用及び収益業務事業費用の金額を表記する様式です。
中区分科目は以下のとおりで、細区分を設けて記載することもできます。
- 売上原価
- 材料費
- 給与費
- 委託費
- 経費
- その他の費用
様式第九の二号:形態別区分
損益計算書の本来業務・附帯業務・収益業務の区分に関わらず、形態別分類した中区分科目別に法人全体の金額を表記する様式です。
6-3. 事業費用明細表の留意点
売上原価の範囲
<運用指針様式第九の一号、九の二号 注1>
売上原価には、当該医療法人の開設する病院等の業務に附随して行われるもの(売店等)及び収益業務のうち商品の仕入れ又は製品の製造を伴う業務について記載すること。
その他の事業費用
<運用指針様式第九の一号、九の二号 注3>
その他の事業費用には、研修費のように材料費、給与費、委託費及び経費の二つ以上の中区分に係る複合費として整理した費目を記載する。
【事業費用明細表】
- 2つの様式から選択可能
- 様式第九の一号は費目別の横串に、損益計算書区分の縦串で表示
- 様式第九の二号は費目別で法人全体金額を表示
- 中区分科目は売上原価、材料費、給与費、委託費、経費、その他の費用の6分類
7. まとめ
医療法人会計基準における附属明細表は、貸借対照表及び損益計算書等を補完する重要な書類です。
5つの附属明細表(有形固定資産等明細表、引当金明細表、借入金等明細表、有価証券明細表、事業費用明細表)それぞれについて、運用指針で定められた様式に従って作成する必要があります。
作成にあたっては、貸借対照表・損益計算書との整合性や書類ごとに運用指針で定められた注書を遵守することが重要です。
医療法人会計基準の適用に際しては、医療法人会計基準を熟知した専門家にご相談のうえで計画的に進めることをおすすめします。
次回も、医療法人会計基準に関する実務について投稿予定です。