2025年7月25日 厚生労働省老健局実施の検討会である、2040年に向けたサービス提供体制等のあり方検討会のとりまとめが公表されました。
老健局実施の本検討会では、介護・障害福祉・こども福祉分野における2040年に発生が想定される課題をもとに、今後の施策の方向性が明確に示されているため、ヘルスケア事業者が今後の事業運営体制を検討するにあたり、考慮が必要な重要な取りまとめとなります。
前回に引き続き、2040年に向けたサービス提供体制等のあり方検討会とりまとめで示された内容について、現状法令等からの変更点やヘルスケア事業者が対応すべき点について解説します。
<参考>前回記事:2040年に向けたサービス提供体制等のあり方検討会 について その1
以下の内容は執筆日時点での情報に基づいています。法令改正等がないか必ずご確認ください。また、内容について細心の注意を払っておりますが、記載の内容をもとに生じたあらゆる損害に関して、弊事務所では一切の責任を負いません。
Ⅲ.介護人材確保・定着やテクノロジー活用等による生産性向上、経営支援
検討事項の2,3点目、介護人材確保・定着やテクノロジー活用等による生産性向上においては、主に以下の課題と方向性が示されています。
①介護人材確保等の目的のため、令和6年度補正予算で職場環境改善・生産性向上や更なる賃上げ等の支援に取り組む必要がある
①都道府県単位で、人材属性や課題を踏まえた人材確保対策の実施を講じていく必要がある
②テクノロジーの活用やタスクシフト・タスクシェア等で、業務改善・効率化を進めるとともに、残業削減・休暇取得など職員への投資を進める
②生産性向上支援として、都道府県の支援取組、導入コスト支援、運用コスト支援など、事業規模・サービス類型等に応じた支援を継続実施する
③他事業者との連携、協働化、大規模化、社会福祉連携推進法人、小規模事業者ネットワークなどの手法による経営課題解決を検討する
本検討項目では、
①人材確保・定着の観点での方向性
②テクノロジーを活用した業務の効率化の方向性
③事業規模大規模化による効率化の方向性
3つの観点で主に方向性が示されています。
①人材確保・定着
2040年に向けて一層の人材不足が見込まれる現状を踏まえて、賃上げおよび人材定着の観点で、方向性が示されています。
賃上げの観点では、令和6年度介護報酬改定で行われた処遇改善加算一本化・加算率引き上げ、令和7年からの一部要件弾力化の流れを踏襲し、一層の賃上げに向けた取り組みの方向性が示されています。
人材定着の観点では、都道府県単位という点が重視され、都道府県単位での議論やプラットフォーム機能拡充化、情報共有促進などの方向性が示されています。
②テクノロジーを活用した業務効率化
テクノロジーを活用した業務効率化の観点では、Ⅱ.サービスモデルの構築や支援体制について で示された方向性と整合した内容になっています。
<参考>前回記事:2040年に向けたサービス提供体制等のあり方検討会 について その1
本検討事項特有の方向性としては、都道府県の導入支援にばらつきが大きく、支援の取組について言及された点があげられます。また、事業者への試用貸し出しの活用を促す点などが明記され、都道府県による導入支援が一層強化されることが想定されます。
また、継続した導入コスト支援、運用コスト支援など、事業規模・サービス類型等に応じた支援が方向性として示されたため、生産性向上推進体制加算などを活用した運用体制強化が望まれます。
③事業規模大規模化による効率化
本検討事項では、他事業者との連携・協働化、経営多角化含めた大規模化、社会福祉連携推進法人、小規模事業者ネットワーク形成が例示であげられています。
Ⅱ.サービスモデルの構築や支援体制について で示された方向性と概ね同内容になっていますが、社会福祉連携推進法人の事務負担軽減や業務要件緩和が示されており、制度設計変更が行われ、現在事例は少数である社会福祉連携推進法人の活用が促されることが想定されます。
Ⅳ.地域包括ケア、医療介護連携、介護予防・健康づくり、認知症ケアの方向性
検討事項の4点目、地域包括ケアや医療介護連携の観点では、主に以下の課題と方向性が示されています。
・地域包括ケアシステムにおいて、受け皿の確保と医療・介護連携強化が必要
・施設型拠点における、協力医療機関マッチングが十分にできておらず、地域医療構想調整会議で調整の検討が必要
・介護報酬、診療報酬の医療介護連携加算は算定要件が複雑なため加算が十分に取得されておらず要件見直しが望まれる
・医療資源、介護資源の地域ごとの見える化を行い、提供体制の検討が必要
・介護予防資源も地域ごとの見える化を行い、介護予防支援拠点を中心にして、利用しやすい体制づくりが必要
・認知症高齢者の社会的孤立を解消し、地域社会とつながり、必要サービスのアクセシビリティを高める地域づくりやインフォーマルな支援を含む地域包括ケアシステム構築が必要
いずれも、以前から重視されている地域包括ケアシステムの一層の強化と、資源を見える化したうえでの地域ごとの体制検討が必要な旨が明言されています。
施設型拠点を運営する事業者にとっては、都道府県主体の協力医療機関マッチング強化や、医療介護連携による加算取得要件緩和の方向性が示されたことで、今後の改正で当該加算を取得できる可能性が高まることが想定されます。
今回は、2040年に向けたサービス提供体制等のあり方検討会のとりまとめで言及されている各事項を解説しました。
今回のとりまとめで共通しているのは、テクノロジー等の活用や事業規模大規模化による運営の効率化と、地域ごとの資源偏在や特性にあわせたサービス提供基盤構築の考えになります。
国の今後の施策で当該考え方を反映した資源配分が行われることが想定されるのみならず、事業者にとっても今後の人材不足と地域ごとのサービス需要の予測に合わせて、事業運営体制変更の検討を計画的に行っていくことが望まれます。
次回は、2040年に向けたサービス提供体制等のあり方検討会で言及された、障害福祉・こども福祉分野での課題と今後の方向性について解説します。
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