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2025年7月25日 厚生労働省老健局実施の検討会である、2040年に向けたサービス提供体制等のあり方検討会のとりまとめが公表されました。
老健局実施の本検討会では、介護・障害福祉・こども福祉分野における2040年に発生が想定される課題をもとに、今後の施策の方向性が明確に示されているため、ヘルスケア事業者が今後の事業運営体制を検討するにあたり、考慮が必要な重要な取りまとめとなります。

前回に引き続き、2040年に向けたサービス提供体制等のあり方検討会とりまとめで示された内容について、現状法令等からの変更点やヘルスケア事業者が対応すべき点について解説します。

<参考>前回記事:2040年に向けたサービス提供体制等のあり方検討会 について その2

以下の内容は執筆日時点での情報に基づいています。法令改正等がないか必ずご確認ください。また、内容について細心の注意を払っておりますが、記載の内容をもとに生じたあらゆる損害に関して、弊事務所では一切の責任を負いません。

Ⅴ.社会福祉法人制度

あり方検討会では、社会福祉法人制度自体について、主に以下の課題と方向性が示されています。

①国庫補助財産の取得10年未満転用制限の緩和

②社会福祉法人解散時の施設等帰属先制限

③社会福祉連携推進法人の要件緩和

以下で、それぞれの課題と方向性について解説します。

①国庫補助財産の取得10年未満転用制限の緩和

社会福祉法人等が、補助金による国庫補助を受けて取得した財産を、転用・譲渡等処分する際には制限が課されます。

主に中山間・人口減少地域ではサービス需要が急速に減少していく一方、当該制限により環境変化に合わせたサービス提供体制の変更を行う支障になっていると考えられます。

具体的には、高齢者施設から障害者施設や児童施設など地域需要に合わせた転用施設の統合を柔軟に行えない、などの弊害が想定されます。

あり方検討会では、地域差を踏まえてサービス需要減少地域では、効率的なサービス提供体制を整えるため、大規模化集約化多機能化を打ち出してインセンティブ付与も検討されているため、中山間・人口減少地域の事業者中心に、今後の事業集約化・他サービス展開を考慮した事業計画の検討していくことが重要となります。

<参考>2040年に向けたサービス提供体制等のあり方検討会 について その1

<厚生労働省所管一般会計補助金等に係る財産処分承認基準>
第3 国庫納付に関する承認の基準
2 地方公共団体以外の者が行う財産処分
(1) 国庫納付に関する条件を付さずに承認する場合
経過年数が 10 年以上である施設等に係る財産処分であって、次の場合に該当するもの
転用、無償譲渡又は無償貸付の後に別表に掲げる事業に使用する場合
交換により得た施設等において別表に掲げる事業を行う場合
ウ 別表に掲げる事業に使用する施設等を整備するために、取壊し等を行うことが必要な場合(建て替えの場合等) (後略)

(2) 国庫納付に関する条件を付して承認する場合
上記以外転用、譲渡、貸付、交換及び取壊し等については、国庫納付に関する条件を付して承認するものとする。

②社会福祉法人解散時の施設等帰属先制限

社会福祉法人は、解散時の残余財産帰属先は、社会福祉事業を行うものまたは国庫となります。

<参考>社会福祉法人について-社会福祉法(各種規制) その2

あり方検討会において、社会福祉法人の解散時の施設等を、自治体とする案が示されています。

自治体に施設等を帰属させ、地域特性を踏まえた福祉施設施設として有効活用していく趣旨となります。

あり方検討会では、都道府県等の自治体単位地域差を踏まえたサービス提供体制整備の考えが重視されています。その点で、国庫等に帰属させるのではなく、主体となる都道府県等の自治体に帰属させ、地域特性を考慮して積極活用していく方針が反映されているといえます。

③社会福祉連携推進法人の要件緩和

社会福祉連携法人において、主に以下の2点制度改正に向けた検討方針が示されています。

Ⅰ.事業要件の緩和

Ⅱ.規模要件の緩和

具体的な緩和の方向性には以下のとおりです。

Ⅰ.事業要件の緩和

社会福祉連携推進法人は、社会福祉事業を行うことができないとされています(社会福祉法 第132条第4項)。

この制限を、中山間部・人口減少地域などで、一定の条件で緩和する方向性が示されています。

社会福祉連携推進法人は、参画する社員(社福)の経営をバックアップすることを主たる目的としており、直接のサービス提供は想定されない枠組みですが、人材確保等が困難な地域などでサービス提供体制維持を重視する方針を反映し、当該制限を一部緩和する方向性が示されました。

Ⅱ.規模要件の緩和

社会福祉連携推進法人は、社会福祉連携推進業務以外の業務(その他の業務)の事業規模が、法人全体の事業規模の半分以下であることが必要です(社会福祉連携推進法人認定申請マニュアル 1(7))。

この制限を、中山間部・人口減少地域などで、一定の条件で緩和する方向性が示されています。

これは、Ⅰ.事業要件の緩和による社会福祉事業要件緩和と合わせて、社会福祉連携推進法人直接のサービス提供が可能な法人形態に変化に対応する、制度変更となります。

これらは、社会福祉連携推進法人制度を活用した協働化による、サービス提供体制の効率化促進の方向性が反映されたものであり、今後は社会福祉連携推進法人の設立・活用にインセンティブが付与されることが見込まれ、地域における連携体制連携推進法人設立の流れが加速することが想定されます。

地域の流れを踏まえて、法人の立ち位置明確化事業戦略の検討計画的に行っていくことが重要となります。

<社会福祉法>
第132条
3 社会福祉連携推進法人は、社会福祉連携推進業務以外の業務を行う場合には、社会福祉連携推進業務以外の業務を行うことによつて社会福祉連携推進業務の実施に支障を及ぼさないようにしなければならない。
4 社会福祉連携推進法人は、社会福祉事業を行うことができない

<社会福祉連携推進法人認定申請マニュアル> ※一部抜粋
1 社会福祉連携推進業務
(7)社会福祉連携推進業務以外の業務の取扱い
社会福祉連携推進業務以外の業務(以下「その他業務」という。)については、次の点を満たすものについては、行って差し支えありません
その他の業務の事業規模が、連携推進法人全体の事業規模の過半に満たないこと

Ⅵ.社会福祉法人制度

最後に、介護以外の障害福祉・こども福祉分野における共通課題として、主に以下の課題と方向性が示されています。

人材確保プラットフォーム機能を拡充し、福祉人材の確保を進める

地域の中核的サービス提供者(株式会社等含む)が、バックオフィス業務を取りまとめるなど協働化することで、効率化を図るとともに、中核事業者にインセンティブを付与する仕組みを検討する

事業者間/地域連携の強化

これらは、前回までに解説した、地域特性を踏まえたサービス提供体制維持都道府県を中心とした地域連携人材確保に向けた取り組みと共通になります。

今後の地域ごとのサービス需要に合わせて、効率的なサービス提供体制を構築維持する方向性が示されています。

介護以外の、障害福祉・こども福祉分野においても、一層の大規模化集約化多機能化に対するインセンティブ付与が想定されます。この流れを踏まえて、施設ごとの立ち位置明確化法人戦略の検討計画的に行っていくことが重要となります。

以上のように、2040年に向けたサービス提供体制等のあり方検討会では今後の社会福祉事業の方向性が示されています。これら情報を活用して、早い段階から計画的に法人の事業計画や施設運用計画を策定していくことが必要です。

詳細や体制改善へのご依頼等お問い合わせは、お気軽に以下からご連絡ください。