ICT等の活用による看護業務効率化の推進
対象病棟、施設基準、導入実務等制度を詳解
見守り・記録・情報共有の3分野でICT機器等を活用することで、看護要員配置基準を柔軟化。幅広い入院料が対象です。
令和8年度診療報酬改定で、看護人材不足への対応のため、ICT機器等を活用した看護業務の効率化を推進する新たな仕組みが導入されます。
見守り・記録・情報共有の3分野でICT機器等を活用する場合、看護要員の配置基準が1割以内で柔軟化されます。本記事では、対象病棟、施設基準、算定要件、そして医療機関が取り組むべき実務ポイントまでを網羅的に解説します。
1. 改定の背景
生産年齢人口の減少などの影響で、医療現場では人手不足が深刻化しています。中でも看護職員の業務負担は大きく、業務の効率化と負担軽減が重要となります。
ICT機器等を活用することで業務の効率化と負担軽減を図る考えが反映され、見守り、記録、医療従事者間の情報共有の3分野において、ICT機器等を活用することで、看護要員の配置基準を柔軟化する仕組みが新設されます。
ただし、単にICT機器を導入すれば良いわけではありません。適切な運用体制、継続的な評価・改善、労働時間管理などの要件が求められます。
2. 配置基準の柔軟化の概要
今回の改定により、新たに配置基準柔軟化の仕組みが導入されます。
【配置基準柔軟化の骨子】
| 項目 | ICT活用による緩和後 |
|---|---|
| 看護職員数 | 基準の90%以上 |
| 看護師比率 | 基準の90%以上 |
| その他の施設基準 | 全て満たす必要あり(変更なし) |
3. 対象となる病棟
本制度の対象となる病棟は、以下の入院料を算定する病棟です。急性期から慢性期まで幅広い病棟が含まれています。
| 入院料名 |
|---|
| 急性期一般入院料1~6 |
| 急性期病院A・B一般入院料 |
| 7対1入院基本料 |
| 10対1入院基本料 |
| 地域包括医療病棟入院料1・2 |
| 小児入院医療管理料1~4 |
| 特殊疾患病棟入院料1・2 |
| 緩和ケア病棟入院料1・2 |
4. 施設基準の詳細
配置基準の柔軟化を受けるためには、以下の新設される施設基準を満たす必要があります。新設施設基準は、①ICT機器等の導入要件、②超過勤務時間要件、③その他取り組みの3つの要素から構成されます。
4-1. ICT機器等の導入要件
看護及び看護補助業務の効率化にあたって、以下の3種類のICT機器等を全て導入し、当該病棟の看護職員等が広く使用している必要があります。
① 見守りにおける業務効率化に資するICT機器等
病室に設置されたカメラ等の映像や病床に設置されたセンサー等により、看護職員が遠隔で複数の患者の行動・体動・日常生活の状況等を把握できる機器が対象です。
プライバシーに配慮する観点から、患者又はその家族等に必要な説明を行い、同意を得ることが必要です。
見込まれる効果:訪室回数の減少等効率化、転倒転落の予防、異常の早期発見、身体的拘束の最小化、医療安全その他患者の生命・身体の保護
② 看護記録の作成等の効率化に資するICT機器等
音声入力による看護記録の作成や電カルからの自動的なサマリー生成等、看護記録の作成等の効率化に資する機器が対象です。
データの入力から記録・保存・活用までを一体的に支援するもの(複数機器連携を含む)に限られます。
見込まれる効果:業務時間外の記録作成時間減少
③ 医療従事者間の情報共有の効率化に資するICT機器等
業務中に手に持たずに複数人と同時に通話できる機器や、病棟の看護職員と病院の医師が携帯しリアルタイムに情報を共有できる端末等、直接対面せずに、多人数の職員間での情報共有を実施できる機器が対象です。
見込まれる効果:報告・連絡に要する時間の減少、報告・連絡に伴う移動や待機の時間の減少
4-2. 超過勤務時間
ICT機器等の導入に合わせて、以下の超過勤務時間要件が求められます。
【超過勤務時間の要件】
なお、超過勤務時間の把握は、原則として、タイムカードやパーソナルコンピュータ等のログイン及びログアウトの時間を把握できる電子計算機の使用により行うことが求められます。
4-3. その他取り組み
その他取り組みとして、以下の要件が求められます。
〇ガイドライン遵守
→以下の6.情報セキュリティ対応〇定期の定量的又は定性的評価、周知・衛生委員会等での確認・対策
→ICT機器等の導入前後における以下の事項について、年1回程度評価を実施し、職員に周知・衛生委員会等で確認・必要な対策を講じる 必要があります。- 看護要員の業務内容・業務量・業務時間
- 事務作業時間
- 業務負担
〇随時調査への参加
→厚生労働大臣が実施するICT機器等の活用状況や看護業務の改善に係る継続的な取組状況等に関する随時調査に適切に参加することが求められます。ICTツールを活用した、業務フロー構築までできていますか?
ICTツールを導入だけでは効率化できません。ツールを活用した業務フローの再構築が効率的組織構築のカギとなります。効率的な組織構築のご支援をします。
管理体制アドバイザリーの詳細はこちら5. 配置基準緩和の具体的計算例
施設基準を満たす場合、看護職員数及び看護師比率について1割以内の減少が許容されます。具体的な計算例は以下の通りです。
ケース:急性期一般入院基本料1(70床病棟)
必要看護職員数
| 項目 | 通常の基準 | ICT活用による緩和後 | 実際の配置例 |
|---|---|---|---|
| 必要看護職員数 | 患者7人に対し1人 (70床÷7=10人) | 通常基準の90%以上 (10人×0.9=9人) | 9人以上で基準充足 |
| 看護師比率 | 看護職員の70%以上 (10人×0.7=7人) | 通常基準の90%以上 (7人×0.9=6.3人) | 看護師6.3人以上で基準充足 |
6. 情報セキュリティ対応
ICT機器等の導入にあたって、電カル等医療情報システムと連動するものについては、適切な情報セキュリティ対策が不可欠となり、施設基準でも準拠が求められています。
【準拠が必要なガイドライン】
主な対応事項
- アクセス制限アクセス権限の限定
- ログ管理:システムへのアクセス記録を適切に保存・管理
- データ暗号化:医療情報の保存・通信時の暗号化
- バックアップ:定期的なデータバックアップの実施
- インシデント対応:セキュリティ事故発生時の対応手順の整備
7. 医療機関が取り組むべきポイント
導入準備段階
1現状分析
現在の看護業務の内容・時間・負担を分析測定し、課題を識別する。
2機器選定
自院の課題に適したICT機器を選定。電カル等既存システムとの連携や、情報セキュリティ要件への対応を確認する。
3投資計画
導入効果と投資額のバランスを試算する。
導入実施段階
4職員研修・マニュアル整備
ICT機器の操作方法、運用ルール、情報セキュリティ等について研修を実施。運用マニュアルも整備します。
5段階的導入・運用
パイロット運用から開始し、全体展開していきます。
運用定着段階
6定期的な評価と改善
効果測定、意見収集と改善を継続実施します。
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