【タスクシフト】医師事務作業補助体制加算の見直し
生成AI活用でクラーク配置基準の柔軟化
生成AI等のICT機器活用によるクラーク配置基準の柔軟化と、業務範囲変更、施設基準、シミュレーションまで詳解します。
令和8年度診療報酬改定において、医師の働き方改革推進に向け、医師事務作業補助体制加算の人員配置基準が柔軟化されます。
生成AIを含むICT機器の活用を条件に、医師事務作業補助者1人を1.2人~1.3人として配置人数に算入できる仕組みが新設されます。
本記事では、配置基準の柔軟化の要件、業務範囲変更、施設基準、シミュレーションまで解説します。
1. 改定の背景
令和6年4月から医師の時間外労働上限規制が適用され、令和8年度以降時間外労働時間の上限が順次引き下げられます。それに伴い、医師の業務負担軽減は喫緊の課題となっています。
一方、医師の業務負担軽減で重要な役割を担う医師事務作業補助者の確保が難しくなっており、タスクシフトの拡大に課題が生じています。
今回の改定では、生成AIをはじめとするICT技術の急速な発展により、医師事務作業補助者の担っている文書作成業務等の大幅な効率化が可能になりつつあり、ICT機器の活用による業務効率化の実績を前提として、配置基準を柔軟化する仕組みが新設されました。
【改定のポイント】
- 生成AI活用で1.2倍算入:生成AIによる文書作成補助システムを導入した場合、1人を1.2人として算入可能
- +他のICT機器で1.3倍算入:音声入力・RPA・説明動画のうち1種類以上を追加で導入した場合、1.3人として算入可能
- 業務範囲の変更:文書作成補助、代行入力等の対象業務を詳細に明記
- 常勤職員の定義:所定労働時間は週32時間以上に変更
2. ICT機器活用による配置基準の柔軟化
今回の改定での最大のポイントは、ICT機器を活用した場合の配置基準柔軟化です。
【配置基準柔軟化の概要】
必須要件:生成AIによる文書作成補助システム
配置基準の柔軟化を受けるには、生成AIを活用した文書作成補助システムの日常的活用が必須です。
具体的には、生成AIを活用した退院時サマリー、診断書、紹介状等の原案作成など、文書作成業務を大幅に効率化するシステムを導入して、業務の効率化が顕著に図られている必要があります。
追加要件:その他のICT機器(1.3倍算入の要件)
生成AIに加え、以下のICT機器のうち少なくとも1種類以上を広く活用することで、1.3倍の算入が可能になります。
| ICT機器の種類 | 内容 |
|---|---|
| 医療文書用の 音声入力システム | カルテ、退院時サマリー、診断書、紹介状の作成に対応する医療文書等への入力を行う専用システム(汎用音声入力機能を除く) |
| RPA | 救急医療情報システム等への医療データ等の定型的な入力作業等を自動化するロボティック・プロセス・オートメーション |
| 患者向け説明動画 | 入退院時の説明、検査・処置、麻酔・鎮静、手術、IC、医療安全・感染対策等に関する10種類以上の動画 |
【柔軟化の意味】
ICT機器を適切に活用することで、より少ない人数でも現在の基準を維持できる可能性があります。
3. 業務範囲の変更 ― 何ができて何ができないか
今回の改定では、医師事務作業補助者が実施可能な業務について、一層明確化されました。
実施可能な業務
医師事務作業補助者の業務は、医師(歯科医師を含む)の指示の下に、以下の業務を実施するものとされています。
| 業務区分 | 具体的な内容 | 改定対応 |
|---|---|---|
| ① 文書作成補助 | 診断書、診療情報提供書、返信、診療サマリー、診療計画書等 | 明確化 |
| ② 代行入力 | 診療記録、検査オーダー、食事オーダー、クリニカルパス、地域連携パス | 拡大 |
| ③ 説明文書の準備・作成 | 患者・家族への説明文書の準備・作成 | 拡大 |
| ④ 診療録等の整理 | 診療録・画像検査結果等の整理 | 拡大 |
| ⑤ 医療の質向上に資する事務作業 | 診療に関するデータ整理、院内がん登録等の統計・調査・入力作業、研修準備等 | 拡大 |
| ⑥ 病棟における患者対応 | 入院時の案内等 | 変更なし |
| ⑦ 行政上の業務 | 救急医療情報システム、感染症サーベイランス事業への入力 | 変更なし |
実施できない業務
【医師事務作業補助者が実施できない業務例】※変更なし
- 医師以外の職種の指示の下に行う業務
- 診療報酬の請求事務(DPCのコーディングに係る業務を含む)
- 窓口・受付業務
- 医療機関の経営、運営のためのデータ収集業務
- 看護業務の補助
- 物品運搬業務
4. 施設基準の詳細要件
ICT機器を活用した配置基準の柔軟化を受けるためには、以下の新設施設基準をいずれも満たす必要があります。
要件①:組織的導入・日常的な活用・業務効率化
導入したICT機器について、当該保険医療機関内で組織的に導入し、勤務する大半の医師及び医師事務作業補助者が日常的に活用することで、業務の効率化が顕著に図られていることが必要です。
要件②:情報セキュリティ対応
電カルその他の医療情報システムと連動して医療情報を取り扱うICT機器については、以下のガイドラインに準拠していることが必要です。
- 厚生労働省「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」
- 総務省・経済産業省「医療情報を取り扱う情報システム・サービスの提供事業者における安全管理ガイドライン」
また、AI技術を用いる製品・サービスについては、経済産業省及び総務省が公表する「AI事業者ガイドライン」が遵守されていることが必要です。
要件③:研修・体制整備
導入したICT機器について、全ての医師事務作業補助者に対し、操作方法及び生成AIの適切な利用に関する研修を実施する必要があります。また、全ての医師事務作業補助者が、常時、当該ICT機器を用いて業務を遂行できる体制を整備する必要があります。
要件④:届出前の配置基準要件
ICT機器を活用した配置人数算入で新たに届け出る場合、直近3月以上、ICT機器を活用した配置人数算入なしで同等以上の配置区分を引き続き算定する必要があります。
要件⑤:定期的評価・衛生委員会等での確認・対応要件
ICT機器等の導入前後における以下の事項などについて、年1回程度評価を実施し、衛生委員会等で確認・必要な対策を講じる必要があります。
- 医師事務作業補助者の業務内容・業務量・業務時間
- 業医師の事務作業時間・負担感
- 100床、医師事務作業補助体制加算1・25対1を算定
- 通常の配置:100床÷25 = 4名 → 4名以上配置が必要
- ICT活用で配置基準を柔軟化:生成AIで1.2倍算入、ICT機器追加導入で1.3倍算入が可能に。
- 業務範囲の変更:説明文書の準備・作成、診療録等の整理が新たに明記。その他対象範囲も拡大。
5. シミュレーション
ケース1:100床の急性期病院
前提条件
ICT導入による配置効果
【生成AI導入の場合(1.2倍算入)】
4名 × 1.2 = 4.8名相当 → 同じ4名でも実質4.8名の配置として評価
【生成AI+音声入力導入の場合(1.3倍算入)】
4名 × 1.3 = 5.2名相当 → 同じ4名でも実質5.2名の配置として評価
→各種要件を満たすことで、既存人員でも、【上位区分に移行時の増収見込み】
加算1・25対1(725点)→ 加算1・20対1(855点)= 1入院あたり+130点(+1,300円)
年間入院患者数2,000人と仮定:年間約260万円の増収
ICTツールを活用した、業務フロー構築までできていますか?
ICTツールを導入だけでは効率化できません。ツールを活用した業務フローの再構築が効率的組織構築のカギとなります。効率的な組織構築のご支援をします。
管理体制アドバイザリーの詳細はこちら6. 医療機関が対応すべき実務チェックリスト
1現状分析と導入計画の策定
医師の事務作業時間と内容を分析し、最も効率化効果の高い業務を特定。目指す配置区分を明確にする。
2ICT機器の選定と導入
生成AIシステムは必須。コスト、電カルとの連携、セキュリティ要件、AI事業者ガイドラインへの準拠を確認する。
3研修の実施と体制整備
全ての医師事務作業補助者への操作研修、生成AIの適切な利用に関する研修、情報セキュリティ研修を実施。運用マニュアルの整備も必要。
4年次評価体制の構築
ICT導入前後の定量的・定性的評価の実施体制を構築。衛生委員会等での確認プロセスを整備する。
8. まとめ
令和8年度診療報酬改定における医師事務作業補助体制加算の見直しは、以下の2つの特徴を有しています。
【改定の2つの特徴】
単にICT機器を導入するだけでは要件を満たさず、組織的な導入、大半の医師・補助者による日常的活用などの要件が求められます。一方で、これらの要件をクリアできれば、人材確保が困難な環境下でも柔軟な加算取得が可能となり、医師の働き方改革と運営改善の両立が期待できます。
まずは自院の現状分析を行い、効率化ツールを活用できる体制を整備するとともに、必要十分な生成AIシステムの選定・導入することが重要です。
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