【急性期新設】急性期病院一般入院基本料の新設
救急搬送・手術実績、人口が少ない地域に着目した新評価体系
急性期病院A一般入院料は1,930点/日、急性期病院Bは1,643点/日。施設基準、既存入院基本料との比較、シミュレーションまで詳解します。
令和8年度診療報酬改定において、地域で病院が果たしている救急搬送の受入や手術等の急性期機能に着目し、「急性期病院一般入院基本料A・B」が新設されます。
急性期病院A一般入院料は1,930点/日、急性期病院B一般入院料は1,643点/日で、急性期病院Aは現行の急性期一般入院料1(1,874点)を上回る評価となります。
本記事では、新入院基本料の概要、施設基準の詳細、既存入院基本料との比較、シミュレーションまで解説します。
1. 改定の背景と趣旨
従来の入院基本料体系は、看護配置や重症度、医療・看護必要度といった「病棟単位」の指標を中心に評価が行われてきました。
しかし、人口減少が進む中で、救急搬送の受入や全身麻酔手術など、「病院単位」で担っている機能を適切に評価する必要性が高まっています。
今回の改定では、救急搬送件数や全身麻酔手術件数等の急性期実績に着目した施設基準を設け、地域ごとの急性期医療体制を確保する観点から、急性期病院一般入院基本料が新設されました。
人口の少ない地域で救急搬送受入を最も多く担う病院について配慮された制度設計となっている点が特徴です。
2. 急性期病院一般入院基本料の概要と点数
【急性期病院一般入院基本料の点数】
急性期病院Aは、救急搬送件数や手術実績が特に高い病院を対象としており、現行の急性期一般入院料1(1,874点)を56点上回っています。急性期病院Bは、地域の中核的な急性期医療を担う病院を対象としており、急性期一般入院料4(1,597点)を46点上回っています。
入院基本料の比較
| 区分 | 点数/日 | 看護配置 | 平均在院日数 |
|---|---|---|---|
| 急性期病院A一般入院料(新設) | 1,930点 | 7対1 | 16日以内 |
| 急性期一般入院料1 | 1,874点 | 7対1 | 16日以内 |
| 急性期病院B一般入院料(新設) | 1,643点 | 10対1 | 21日以内 |
| 急性期一般入院料4 | 1,597点 | 10対1 | 21日以内 |
新加算の届出には、管理体制の整備が前提です
施設基準の充足には、感染対策・急変対応・医療従事者の負担軽減等の組織体制の実効性が問われます。「体制はあるが形骸化している」「属人的で標準化されていない」等の課題がある場合、届出前の管理体制の見直しが有効です。
管理体制アドバイザリーの詳細はこちら3. 施設基準の詳細
3-1. 共通の要件
急性期病院A・Bに共通する主な施設基準は以下のとおりです。
| 主な要件 | 急性期病院A | 急性期病院B |
|---|---|---|
| 看護配置 | 7対1 | 10対1 |
| 看護師比率 | 7割以上 | 7割以上 |
| 平均在院日数 | 16日以内 | 21日以内 |
| データ提出加算 | 届出あり | 届出あり |
| DPC対象病院指定 | 対象病院指定あり | 対象病院指定あり |
| 重症度、医療・看護必要度Ⅱ | 割合①27%以上、割合②34%以上 | 割合①27%以上、割合②34%以上 |
| 地域包括医療病棟 | 届出なし | 届出なし |
3-2. 急性期病院Aの施設基準
急性期病院Aは、急性期医療の実績が特に高い病院を対象としています。
【急性期病院A固有の施設基準】
- 急性期医療を提供するにつき必要な体制が整備されていること
- 急性期医療に係る実績を相当程度有していること
- 自宅等退院割合が8割以上
- 常勤医師数が入院患者数×0.1以上
- 地域包括ケア病棟入院料等の届出を行っていないこと
体制要件の詳細
| 要件 | 基準 |
|---|---|
| 救急医療体制 | 二次救急医療体制・救命救急センター・高度救命救急センター・総合周産期母子医療センター等の設置、又は同等の24時間救急受入体制 |
| 画像診断・検査 | 24時間実施できる体制の確保 |
| 地域包括医療病棟 | 届出を行っていないこと |
| 地域包括ケア病棟 | 届出を行っていないこと |
| 看護管理者研修 | 看護師長経験5年以上で一定の研修を修了した看護師の配置が望ましい |
3-3. 急性期病院Bの施設基準
急性期病院Bは、人口減少地域等において急性期医療を担う病院を対象としています。
【急性期病院B固有の施設基準】
- 地域において急性期医療を提供するにつき必要な体制が整備されていること
- 急性期医療に係る実績を一定程度有していること
体制要件の詳細
| 要件 | 基準 |
|---|---|
| 救急医療体制 | 医療計画に記載の二次救急医療機関、又は救急病院等を定める省令に基づく認定救急病院 |
| 地域包括医療病棟 | 届出を行っていないこと |
| 看護管理者研修 | 看護師長経験5年以上で一定の研修を修了した看護師の配置が望ましい |
急性期病院Bは急性期病院Aと比較して、画像診断・検査の24時間体制は必須ではなく、また地域包括ケア病棟との併設制限もありません。
3-4. 急性期医療に係る実績要件
本入院基本料の特徴として、病院全体の急性期機能実績を要件とする点があげられます。
【急性期病院Aの実績要件】
※両方の基準を同時に満たすことが必要
【急性期病院Bの実績要件(いずれか1つ)】
急性期病院Bの要件③④は、人口の少ない地域や離島において救急搬送の受入を担う病院に対応した規定です。対象となる地域は別途限定列挙されています。
3-5. 救急搬送件数の算定に関する留意事項
救急搬送件数の算定にあたっては、以下の規定があるため留意が必要です。
【介護保険施設入所者の搬送の取扱い】
介護老人福祉施設・介護老人保健施設・介護医療院に入所中の患者の救急搬送は、原則として搬送件数に算入しません。ただし、以下のいずれかに該当する場合は算入可能です。
- 介護保険施設が協力医療機関に連絡した結果、受入困難で救急要請した場合
- 傷病者搬送基準に基づく救急搬送の受入れの場合
- 急性期病院A又はBで受入後3日以内に協力医療機関に転院した場合
【夜間搬送要件】
救急搬送件数のうち、夜間時間帯(22時~翌朝8時)に受け入れた件数が全体の1割以上であることが必要です。
4. 既存の入院基本料との比較
急性期病院一般入院基本料と既存の入院基本料について、入院物価対応料を含めた比較は以下のとおりです。
| 区分 | 入院基本料 | 入院物価対応料 ※令和9年5月まで | 合計 |
|---|---|---|---|
| 急性期病院A一般入院料(新設) | 1,930点 | 66点 | 1,996点 |
| 急性期一般入院料1 | 1,874点 | 58点 | 1,932点 |
| 急性期病院B一般入院料(新設) | 1,643点 | 58点 | 1,701点 |
| 急性期一般入院料4 | 1,597点 | 45点(58点) | 1,642点(1,655点) |
※()内は看護・多職種連携加算を取得している場合
急性期病院A一般入院料は、入院物価対応料を含めると1,996点/日となり、急性期一般入院料1(1,932点)に比べて64点/日の増収となります。急性期病院Bは、急性期一般入院料4(看護・多職種連携加算未取得の場合)に比べて入院物価対応料を含め59点/日の増収です。
また、令和10年度改定以降は急性期病院A・B一般入院料の届出を行う医療機関をDPC標準病院群1とすることが想定されており、今回はそのためのデータ収集を行う旨が明記されています。したがって、DPC標準病院群の病院では、計画的な移行準備が重要となります。
5. 経過措置
今回の新設にあたり、以下の経過措置が設けられています。
| 対象 | 経過措置の内容 |
|---|---|
| 地域包括医療病棟の届出あり | 令和8年3月31日時点で届出がある場合、当分の間、急性期病院Aの地域包括医療病棟に係る基準及び急性期病院Bの同基準を満たしているものとみなす |
| 地域包括ケア病棟の届出あり | 令和8年3月31日時点で届出がある場合、当分の間、急性期病院Aの地域包括ケア病棟に係る基準を満たしているものとみなす |
| 介護保険施設からの搬送 | 令和9年3月31日までは、全ての救急搬送件数を実績に算入可能 |
6. 医療機関が対応すべき実務チェックリスト
1実績データの確認
直近1年間の救急搬送件数(介護施設からの搬送の内訳含む)、全身麻酔手術件数を集計する。夜間帯(22時~翌朝8時)の搬送件数が全体の1割以上あるかも確認する。
2体制要件の充足確認
救急医療体制(二次救急指定等)、画像診断・検査の24時間体制(急性期病院Aの場合)、重症度・医療看護必要度の基準値充足を確認する。
3収支シミュレーションの実施
現在の入院基本料との差額に基づく増収見込みを算出し総合的な収支分析を行う。
7. まとめ
【改定3つの特徴】
- 病院機能に着目した新評価体系:従来の病棟単位の評価に加え、救急搬送件数・手術件数等の「病院全体」の急性期機能実績を施設基準に導入。
- 最高水準の点数設定:急性期病院A(1,930点)は急性期一般入院料1(1,874点)を56点上回り、入院物価対応料を含めると1,996点/日の最高水準。
- 地域への配慮:人口20万人未満の地域や離島において、救急搬送を最も多く受け入れる病院については、実績要件が緩和。
急性期病院一般入院基本料は、「病棟の看護配置」だけでなく「病院全体の急性期機能」を評価するという新たな評価軸を導入した制度です。救急搬送件数や手術件数の実績が高い病院にとっては、増収につながる可能性があります。
まずは自院の救急搬送件数・手術件数等の実績データを精査し、急性期病院A又はBの施設基準の充足可能性を評価することが重要です。
診療報酬改定対応の第一歩は、
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