【生活習慣病管理料】5つの見直しを徹底解説
包括範囲の縮小・眼科歯科連携加算新設・血液検査要件等
基本点数は据え置き。管理料(Ⅱ)の包括範囲を大幅縮小し別途算定可能な管理料を拡大。眼科・歯科医療機関連携強化加算(各60点)を新設。在宅自己注射指導管理料の算定要件を緩和。療養計画書の患者署名を不要化など。
令和8年度診療報酬改定において、生活習慣病管理料の見直しが行われます。
令和6年度の前回改定で特定疾患療養管理料から生活習慣病が除外された影響が大きく、中医協の調査では73.1%の医療機関が管理料(Ⅱ)のみを算定している状況です。
また、生活習慣病の治療・管理を途中で中断してしまう患者の存在や、管理料(Ⅰ)の算定が進んでいない実態も議論されてきました。
今回の改定では、基本点数の変更はありませんが、管理料(Ⅱ)の包括範囲の縮小(併算定可能な管理料の拡大)、眼科・歯科医療機関連携強化加算の新設(各60点)、在宅自己注射指導管理料の算定要件緩和、管理料(Ⅰ)の血液検査6月に1回要件化、療養計画書の患者署名不要化の5点が改定されます。
本記事では、改定の背景、具体的な変更内容、実務対応まで解説します。
1. 生活習慣病管理料の概要と前回改定の経緯
生活習慣病管理料は、脂質異常症、高血圧症又は糖尿病を主病とする患者に対して、生活習慣に関する総合的な治療管理を行うことを評価する管理料です。許可病床数200床未満の病院又は診療所において、月1回算定できます。
【生活習慣病管理料の基本情報(現行)】
前回改定(令和6年度)の経緯
令和6年度の診療報酬改定は、開業医にとって影響の大きい改定でした。特定疾患療養管理料の対象疾患から糖尿病・脂質異常症・高血圧が除外され、その受け皿として生活習慣病管理料が改定されました。
2. 改定の背景:中医協での議論ポイント
令和8年度改定に向けた中医協の議論では、前回改定後の生活習慣病管理料の算定実態に基づき、複数の課題が指摘されました。
【中医協・入院外来分科会で指摘された主な課題】
- 治療中断患者の存在:生活習慣病の治療・管理を途中で中断してしまう患者が相当程度おり、医療機関ごとにばらつきが生じている
- 医学管理の実態:生活習慣病患者について、6か月検査が実施されていない患者が一定数いる
- 糖尿病の重症化予防:糖尿病患者に対してオーラルフレイル予防や口腔機能低下対応の観点から、歯科への受診促進体制強化が一層必要である
- 療養計画書の負担:算定に際して困難なこととして「療養計画書を作成し、患者に対して丁寧に説明の上署名を受けること」が最も多い
これらの議論を踏まえ、今回の改定では「生活習慣病に対する質の高い疾病管理を推進する観点」から5点の見直しが行われました。
3. 変更点①:管理料(Ⅱ)の包括範囲の縮小
生活習慣病管理料(Ⅱ)の包括範囲から多数の医学管理料等が除外され、別途算定(出来高算定)が可能になりました。
新たに別途算定可能となる主な管理料等
| 管理料等 | 点数 |
|---|---|
| 特定薬剤治療管理料 | 470点等 |
| 悪性腫瘍特異物質治療管理料 | 400点等 |
この変更により、対象の生活習慣病を主病とする患者に対して、当該管理に対する評価を併算定できるようになります。
4. 変更点②:眼科・歯科医療機関連携強化加算の新設(各60点)
糖尿病の重症化予防を推進する観点から、眼科又は歯科を標榜する他の医療機関との連携を行う場合の評価が新設されました。
【眼科医療機関連携強化加算】
【歯科医療機関連携強化加算】
いずれの加算も、生活習慣病管理料(Ⅰ)及び(Ⅱ)の双方に加算可能です。
5. 変更点③:在宅自己注射指導管理料の算定要件の緩和
糖尿病を主病とする患者に対して、併存する糖尿病以外の疾患に関する在宅自己注射指導管理料の算定が可能になりました。
【改定の趣旨】
生活習慣病管理料(Ⅰ)及び(Ⅱ)について、糖尿病を主病とする患者に対して、併存する糖尿病以外の疾患に関する在宅自己注射指導管理を適切に推進する観点から、糖尿病に対する適応のある薬剤以外の在宅自己注射指導管理料の算定を可能とする。
| 項目 | 現行 | 改定後 |
|---|---|---|
| 糖尿病に対する適応のある薬剤 (インスリン製剤、GLP-1受容体作動薬等) | 在宅自己注射指導管理料の算定時は生活習慣病管理料を算定不可 | 変更なし(算定不可のまま) |
| 糖尿病以外の疾患に対する薬剤 | 在宅自己注射指導管理料の算定時は生活習慣病管理料を算定不可 | 算定可能 |
この改定により、例えば糖尿病を主病として生活習慣病管理料を算定している患者が、併存する他疾患に対して在宅自己注射指導管理を行う場合には、在宅自己注射指導管理料(月1回650点等)を別途算定できるようになります。
【厚生労働大臣が定める薬剤(生活習慣病管理料算定不可薬剤)】
6. 変更点④:管理料(Ⅰ)の血液検査要件化(6月に1回以上)
生活習慣病管理料(Ⅰ)について、原則として、必要な血液検査等を少なくとも6月に1回以上行うことが要件として追加されました。
【管理料(Ⅰ)の検査要件】
生活習慣病管理料(Ⅰ)について、原則として、必要な血液検査等を少なくとも6月に1回以上は行うことを要件とする。
この要件追加の背景には、中医協の調査で6か月に1回も血液化学検査等の産地絵がない患者が一定数を占めていた実態が明らかになったことがあります。管理料(Ⅰ)は検査を包括する報酬であるにもかかわらず、実際に検査が行われていないケースが多いことは制度の趣旨と乖離しており、今回の要件化はこの課題に対処するものです。
管理料(Ⅱ)にはこの要件は適用されません。
7. 変更点⑤:療養計画書の患者署名の不要化
生活習慣病管理料(Ⅰ)及び(Ⅱ)の療養計画書について、患者の署名を受けることが不要となります。
【署名不要化の内容】
生活習慣病管理料(Ⅰ)及び(Ⅱ)の療養計画書について、患者及び医療機関の負担を軽減する観点から、患者の署名を受けることを不要とする。
署名は不要となりますが、療養計画書の作成・交付・説明自体は引き続き必要です。計画書の内容に基づく総合的な治療管理を実施すること、患者の同意を得ることは従来どおりの要件として維持されます。
8. 改定内容の全体比較(現行 vs 改定後)
| 項目 | 現行 | 改定後 |
|---|---|---|
| 管理料(Ⅰ)基本点数 | 脂質610/高血圧660/糖尿病760 | 変更なし |
| 管理料(Ⅱ)基本点数 | 333点 | 変更なし |
| 管理料(Ⅱ)包括範囲 | 広範な医学管理料等を包括 | 縮小(併算定可能範囲を拡大) |
| 眼科医療機関連携強化加算 | (規定なし) | 新設 60点(年1回) |
| 歯科医療機関連携強化加算 | (規定なし) | 新設 60点(年1回) |
| 在宅自己注射指導管理料との併算定 | 在宅自己注射指導管理料算定時は生活習慣病管理料算定不可 | 一部の糖尿病薬剤以外なら算定可 |
| 管理料(Ⅰ)血液検査要件 | (明示的な要件なし) | 6月に1回以上(要件化) |
| 療養計画書の患者署名 | 署名が必要 | 署名不要 |
9. 医療機関が対応すべき実務チェックリスト
1レセコンのマスター設定の確認
管理料(Ⅱ)の包括範囲が縮小されるため、新たに別途算定可能となる管理料のマスター設定を確認する。
2在宅自己注射指導管理料の併算定の検討
糖尿病を主病とする患者のうち、糖尿病以外の疾患で自己注射を行っている患者対象に算定可能性を確認する。
3管理料(Ⅰ)算定患者の血液検査実施状況の確認
管理料(Ⅰ)を算定している患者について、血液検査の実施状況を確認する。
4療養計画書のオペレーション見直し
署名不要化に伴い、療養計画書の運用フロー(作成→説明→交付)を再構築する。
10. まとめ
【改定のポイント一覧】
- 基本点数は据え置き:管理料(Ⅰ)(Ⅱ)ともに変更なし
- 管理料(Ⅱ)の包括範囲を縮小:生活習慣病と直接関係の乏しい管理料等から除外。
- 眼科・歯科医療機関連携強化加算(各60点)を新設:糖尿病の重症化予防を推進。
- 在宅自己注射指導管理料の算定要件を緩和:糖尿病以外の疾患に係る自己注射管理料との併算定が可能に
- 管理料(Ⅰ)の血液検査要件化:6月に1回以上の血液検査実施が要件に。制度趣旨と実態の乖離に対処
- 療養計画書の患者署名を不要化:事務負担の大幅軽減。ただし計画書の作成・交付・説明は引き続き必要
今回の生活習慣病管理料の見直しは、基本点数を維持しつつ、包括範囲の適正化と連携機能の強化によって、かかりつけ医としての適切な疾病管理を推進する方向性が明確に示されています。
内部業務フロー変更が必要になるため、詳細を確認のうえ、体制を整備することが必要です。
生活習慣病管理料の改定対応は、
管理体制の見直しから
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