【入退院支援】入退院支援加算等の見直し
点数新設・退院困難要因の拡大など変更
地域包括医療病棟等に新区分1,000点を新設。検査・画像情報提供で200点加算。算定要件の退院困難要因の対象拡大。医療保護入院の退院支援に新評価。
令和8年度診療報酬改定において、入退院支援加算等に関する重要な見直しが行われます。
今回の改定は、関係機関との連携強化、生活に配慮した支援及び入院前からの支援を強化する観点から、入退院支援加算の評価や要件が見直されるとともに、面会制限の適正化に関する規定の新設、医療保護入院等診療料における多職種退院支援の新評価等が実施されます。
本記事では、改定の背景、具体的な変更内容(全7項目)、実務対応まで解説します。
1. 改定の背景と趣旨
入退院支援加算は、入院早期から退院困難な要因を有する患者を抽出し、多職種連携による退院支援を行うことを評価する加算です。地域包括ケアシステムの推進に伴い、病院から在宅・施設等への円滑な移行がますます重要となっています。
今回の令和8年度改定では、円滑な入退院の実現を目的として、以下の方向で見直しが行われます。
今回の改定の基本方針
- 地域連携の強化:検査・画像情報の提供に対する評価の新設
- 実態を反映した変更:退院困難要因の見直し
- 地域包括体制の推進:地域包括医療病棟等に対応した加算の新設
- 精神科領域の退院支援充実:医療保護入院の多職種退院支援の評価
2. 入退院支援加算1の評価見直し(地域包括医療病棟等の新区分)
入退院支援加算1について、退院支援の負担が大きい病棟類型に対し、新たな点数区分が新設されました。具体的には、地域包括医療病棟入院料、回復期リハビリテーション病棟入院料及び地域包括ケア病棟入院料を算定する場合の区分として「ロ」が追加され、1,000点に設定されています。
| 入退院支援加算1(退院時1回) | 現行 | 改定後 |
|---|---|---|
| イ 一般病棟入院基本料等の場合 | 700点 | 700点(変更なし) |
| ロ 地域包括医療病棟入院料、回復期リハビリテーション病棟入院料及び地域包括ケア病棟入院料の場合 | (新設) | 1,000点 |
| ハ 療養病棟入院基本料等の場合 | 1,300点 | 1,300点(変更なし) |
地域包括医療病棟、回復期リハビリテーション病棟、地域包括ケア病棟では、自宅への退院のみならず転院や介護施設等への入所等、退棟先が多様であり、退院支援の負担を適切に評価する趣旨と考えられます。
3. 地域連携診療計画加算の拡充(検査・画像情報提供加算の新設)
地域連携診療計画加算を算定する患者について、退院先の医療機関等へ治療計画、検査結果、画像診断に係る画像情報等を添付して情報提供を行った場合の加算が新設されました。
【新設:検査・画像情報提供加算の要件】
地域連携診療計画加算を算定する患者について、添付の必要を認め、当該患者の同意を得て、別の保険医療機関・精神障害者施設・介護老人保健施設・介護医療院に対して、以下の情報を添付して情報提供を行った場合にさらに200点を加算する。
- 退院後の治療計画
- 検査結果
- 画像診断に係る画像情報
- その他の必要な情報
【加算額】
退院先の医療機関において必要な情報を共有することで、患者の安全かつ円滑な転院・退院後の診療継続が期待されます。
入退院支援体制の整備には、組織横断的な管理体制の構築が不可欠です
入退院支援部門の運用フロー変更、効率的な管理体制構築など、加算算定に合わせた体制の見直しが有効です。
管理体制アドバイザリーの詳細はこちら4. 介護保険施設等への誘導禁止の明文化
今回の改定では、入退院支援を行うにあたり、退院先となる介護保険施設等への誘導を行い、当該施設から金品等を収受することを禁止する旨が、入退院支援加算1・2・3の施設基準に明文化されました。
【施設基準に追加された規定】
「退院患者を特定の介護保険施設等へ誘導することによって、当該介護施設等から金品その他の財産上の利益を収受していないこと。」
この規定は、入退院支援加算1、入退院支援加算2、入退院支援加算3のいずれにおいても施設基準に追加されています。利益相反を防ぐ規定が明文化されています。
5. 退院困難な要因の見直し
入退院支援加算の算定対象となる患者における退院困難な要因について、2つの見直しが行われました。
5-1. 要介護認定に関する要因の拡充
従来の退院困難な要因では、要介護認定・要支援認定が「未申請」のケースが対象でしたが、改定後は現在の認定区分と実態が乖離している場合(変更申請が未提出のケース)も退院困難な要因に追加されました。
| 退院困難な要因(ウ) | 現行 | 改定後 |
|---|---|---|
| 要介護認定が未申請 | ○ | ○(変更なし) |
| 要支援認定が未申請 | ○ | ○(変更なし) |
| 現に認定を受けているが、認定を受けている要介護状態区分若しくは要支援状態区分以外の区分に該当する疑いがあるが変更の申請がされていない | (規定なし) | 追加 |
対象は、介護保険法施行令第2条各号に規定する特定疾病を有する40歳以上65歳未満の者及び65歳以上の者に限ります。
5-2. 家族等との連絡困難の追加
退院困難な要因として、新たに以下の項目が追加されました。
【退院困難な要因に新設された項目(タ)】
身寄りがない患者や、家族との連絡が取れない患者に対する退院支援の実務負担を反映し、入退院支援加算の算定対象として新規評価されています。
6. 入院中の面会制限の適正化
コロナ禍以降に厳格化された面会制限が、感染状況の改善後も見直されていないケースが問題視されていました。今回の改定では、入院基本料等の通則及び入退院支援加算の施設基準の両面から、面会に関する規定が新設されました。
入院基本料等の通則(望ましい要件)
入院中の患者への家族等による面会については、感染対策等の正当な理由なく面会を妨げないよう、面会に係る規定を策定する等の配慮をすることが望ましい。
※特定入院料の施設基準等においても同様。
入退院支援加算の施設基準(義務規定)
【入退院支援加算1・2・3の施設基準に追加された規定】
- 感染対策等の正当な理由なく、入院中の患者に対する家族等による面会を妨げてはならないこと
- やむを得ず面会の制限を行う場合であっても、当該制限が必要以上に厳格なものとならないよう配慮すること
- 面会に関する規定を策定するとともに、当該規定について定期的に見直しを行うこと
- 患者及びその家族等に対し、当該規定の内容が十分に周知されるよう、病棟等の見やすい場所に掲示すること
入院基本料の通則では「望ましい」という努力義務である一方、入退院支援加算の施設基準では義務になっている点留意が必要です。
7. 精神科入退院支援加算の専従職員の兼務
入退院支援加算と精神科入退院支援加算の双方を届出する場合について、同一の入退院支援部門であるときの専従職員の兼務に関する規定が明確化されました。
【明確化された兼務の範囲】
明文化されたことにより、精神科を併設する医療機関において、人材配置の効率化が一層図られます。
8. 医療保護入院等診療料の見直し(多職種退院支援の新設)
医療保護入院等診療料について、従来の診療料(300点)に加え、多職種による退院支援を行った場合の評価が新設されました。
| 医療保護入院等診療料 | 現行 | 改定後 |
|---|---|---|
| 1 医療保護入院等診療料1 (精神保健指定医による治療計画策定・管理) | 300点 (患者1人につき1回) | 300点 (患者1人につき1回) |
| 2 医療保護入院等診療料2 (多職種での退院支援) | (新設) | 400点 |
医療保護入院等診療料2の算定要件
- 医療保護入院等診療料1を算定した患者に対して、多職種で退院支援を行った場合に算定
- 入院日から起算して6月までの間は3月に1回に限り算定
- 6月以降は6月に1回に限り算定
9. 医療機関が対応すべき実務チェックリスト
1検査・画像情報提供体制の整備
地域連携診療計画加算の算定患者について、退院先への検査結果・画像情報の提供フローを整備するとともに、患者同意の取得フローを確認する。
2退院困難な要因の確認
退院困難な要因が変更となったため、当該変更の影響を確認する。
3医療保護入院患者の退院支援体制の構築
精神科病棟を有する場合、医療保護入院等診療料2の算定に向けた多職種退院支援の体制を構築する。
10. まとめ
【改定のポイント一覧】
- 入退院支援加算1に新区分「ロ」を新設:地域包括医療病棟・回復期リハ病棟・地域包括ケア病棟で1,000点。
- 検査・画像情報提供加算の新設:地域連携診療計画加算に200点の上乗せ。
- 介護施設等への誘導禁止の明文化:入退院支援加算1・2・3すべてで施設基準に追加。
- 退院困難な要因の拡大:要介護認定の区分変更未申請と家族等との連絡困難を追加。
- 面会制限の適正化:入院基本料通則に努力義務規定、入退院支援加算に義務規定を新設。面会規定の策定・掲示・定期見直しが必要。
- 精神科入退院支援加算の兼務規定の明確化:看護師・社会福祉士の兼務範囲を明文化。
- 医療保護入院等診療料2の新設:多職種退院支援に400点。入院6月まで3月に1回、6月以降6月に1回算定可能。
今回の入退院支援加算等の見直しは、多岐にわたる改定項目を含んでいます。新区分や新加算を確実に算定するため、運用体制を整備することが重要です。
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