【最大の改定率】ベースアップ評価料を徹底解説
点数・算定要件・シミュレーション
令和8年6月より、対象職員、継続的賃上げ、減算規定、段階的引上げ等の仕組みを詳解します。
令和8年度診療報酬改定の大きな柱が、医療従事者の賃上げ評価(ベースアップ評価料)の拡充です。
改定のポイントは、①対象職員の拡大、②令和6年度報酬改定のベースアップ評価料算定医療機関の優遇、③令和9年6月に点数を約2倍に引上げる段階的評価の3点があげられます。
本記事では、医科に特化して、点数、算定要件、段階的引き上げ、減算規定などの制度変更点について解説します。
1. 制度の全体像 ― 賃上げの位置づけ
改定率の内訳と賃上げ財源
令和8年度診療報酬改定の本体改定率+3.09%のうち、賃上げ対応分は+1.70%を占め、改定の最大の柱となっています。
| 項目 | 改定率 | 概要 |
|---|---|---|
| 賃上げ対応 | +1.70% | ベースアップ評価料の拡充等 |
| 物価対応 | +0.76% | 物価対応料の新設 |
| 緊急対応等 | +0.44% | 初再診料・入院基本料の本体引上げ |
| その他・拡充 | +0.34% | 機能分化・連携等 |
| 適正化 | ▲0.15% | リフィル処方推進の効率化等 |
| 本体合計 | +3.09% |
賃上げの目標水準
令和8年度及び令和9年度それぞれで+3.2%のベースアップ実現を支援するため、賃上げ対応で大きな改定が行われています。中でも、看護補助者と事務職員については、他産業との人材獲得競争を踏まえ、5.7%の賃上げ目標が立てられています。
令和6年度改定との関係
今回の改定では、令和6年度・7年度から継続して賃上げを実施してきた医療機関とその他の医療機関で区別される報酬体系が設定されています。
具体的には、前者の医療機関では点数加算が行われる一方、賃上げ未実施の医療機関では入院基本料の減算規定が設けられています。
2. 対象職員の拡大 ― 何が変わるのか
今回の改定で最も基本的かつ影響範囲の大きい変更が、賃上げ評価の対象職員の定義拡大です。
| 項目 | 現行(令和6年度) | 改定後(令和8年度) |
|---|---|---|
| 対象職員 | 主として医療に従事する職員(医師及び歯科医師を除く) | 保険医療機関に勤務する職員 |
| 含まれる職種 | 看護師、薬剤師、PT、OT等の医療職 | 医療職に加え、事務職員等も含む |
拡大の理由
令和6年度診療報酬改定では、入院基本料や初・再診料の引上げにより40歳未満の勤務医や事務職員等に賃上げ原資が配分されましたが、ベースアップ評価料の対象は「主として医療に従事する職員」に限定されていたため、事務職員等の賃上げの「実効性確保」が課題として残っていました。
令和8年度報酬改定でベースアップ評価料の対象職種とすることで、報告義務で実効性を担保しながら 、幅広い職種での賃上げを図る設計となっています。
【実務上の重要ポイント】
対象職員が「勤務する職員」に拡大されることで、従来は対象外だった医事課等の事務職員も含めた賃金改善計画の策定が必要です。
3. 外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)の見直し
外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)では、点数の大幅な引上げと継続的賃上げに対する加算が行われます。
点数の改定
| 区分 | 現行点数 | R8.6から | R9.6から |
|---|---|---|---|
| 1 初診時 | 6点 | 17点 | 34点 |
| 2 再診時等 | 2点 | 4点 | 8点 |
| 3 訪問診療時(イ) 同一建物居住者等以外 | 28点 | 79点 | 158点 |
| 3 訪問診療時(ロ) イ以外 | 7点 | 19点 | 38点 |
継続的賃上げ
今回の改定では、令和6年度・令和7年度からの継続的な賃上げに対する加算が設定されています。すなわち、賃上げを継続して実施した医療機関は、上記点数点数に代えて、以下の点数を算定することができます。
【継続的賃上げの点数(R8.6~R9.5)】
- 初診時:23点 (通常17点)
- 再診時等:6点 (通常4点)
- 訪問診療時(イ):107点 (通常79点)
- 訪問診療時(ロ):26点 (通常19点)
【継続的賃上げの点数(R9.6以降)】
- 初診時:40点 (通常34点)
- 再診時等:10点 (通常8点)
- 訪問診療時(イ):186点 (通常158点)
- 訪問診療時(ロ):45点 (通常38点)
すなわち、①令和6年度・7年度から継続賃上げの医療機関、②令和8年度から賃上げの医療機関、③賃上げを行わない(算定しない)医療機関の3区分で、ベースアップ評価料は異なることになります。
4. 外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅱ)の見直し
外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅱ)でも、評価料(Ⅰ)と同様に見直しが行われます。
5. 入院ベースアップ評価料の見直し
入院ベースアップ評価料でも、外来・在宅ベースアップ評価料と同様に見直しが行われます。
| 項目 | 現行 | R8.6から | R9.6から |
|---|---|---|---|
| 段階 | 1~165 (165段階) | 1~250 (250段階) | 1~500 (500段階) |
| 刻み | 1点刻み | 1点刻み | 1点刻み |
| 最大点数 | 165点/日 | 250点/日 | 500点/日 |
これまでの最大点数は165点から、令和9年6月以降は500点まで、約3倍に点数が引上げられます。
6. 継続的賃上げ未実施医療機関への減算規定【新設】
今回の改定で新設された規定に、継続的な賃上げを行っていない医療機関への入院基本料の減算規定があります。
令和6年度及び令和7年度に賃上げを実施していない医療機関を対象に、入院基本料、特定入院料、短期滞在手術等基本料の減算が行われます。
減算点数の例
| 算定する入院基本料等 | 1日あたり減算点数 |
|---|---|
| 急性期病院A、急性期一般1、 急性期病院B(看護・多職種協働加算算定)、 急性期一般4(看護・多職種協働加算算定) | 121点/日を減算 |
※算定する入院基本料等により減算点数は異なる
すなわち、令和6年度・7年度から継続賃上げの医療機関と、その他医療機関で算定できる入院基本料等の点数が異なってきます。
7. その他の変更点
令和7年1月より、外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)の届出簡素化が行われました。
今回の改正では一層の届出簡素化として、申請書・中間報告書・報告書の3書類への変更、区分見直し計算(※)の廃止などが議論されています。
今後の事務連絡等により、当該方針通達が行われることが想定されます。
※外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅱ)、入院ベースアップ評価料等のみ対象
8. まとめ
令和8年度診療報酬改定における賃上げ評価の見直しは、以下の4つの特徴があります。
【改定の4つのポイント】
- 対象職員の拡大:「主として医療に従事する職員」→「勤務する職員」。事務職員等も対象に。
- 継続的賃上げ加算の新設:令和6・7年度に賃上げ実施済みの医療機関で加算が行われる。
- 段階的評価の導入:令和9年6月以降、点数を約2倍に引上げ。
- 減算規定の新設:賃上げ未実施機関への入院基本料等の減算規定。
限られた人材活用の第一歩は、
体制改善から
人材不足の状況下では、賃上げと合わせた組織づくりが重要です。
医療専門の公認会計士が、貴院の組織体制を総合的に診断し、
過剰領域の効率化と個人が活躍できる組織づくりをご支援します。
ご説明はこちら 無料ご相談の
お申し込みはこちら