【一般社団の非営利性】
医療法人との違いと、
従来の一般社団法人立医療機関との違いを徹底解説
令和8年7月31日、厚生労働省医政局は「非営利性の確認のポイント」を都道府県等に通知しました(医政総発0731第2号・医政支発0731第3号)。あわせて政令改正により計算書類等の届出が義務づけられました。医療法人との制度上の違い、そして従来の制度との違いという2つの軸から整理解説します。
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一般社団法人が開設する医療機関が近年増加しています。
医療法人には医療法上非営利性の徹底が求められていますが、一般社団法人は登記のみで設立を行うことができ、制度上継続的な監視の仕組みがなく、非営利性を実質的に確認できない状態が続いていました。今回の制度改正は、この空白を埋めることを目的としています。
本記事では、①医療法人との違い、②従来の一般社団法人制度との違いという2つの軸から、相違点と実務上の論点について整理します。
1. なぜ今、一般社団法人の非営利性が問われるのか
医療法第44条は、医療法人の設立について次のように定めています。
医療法第44条
※一部抜粋「医療法人は、その主たる事務所の所在地の都道府県知事の認可を受けなければ、これを設立することができない。」
すなわち、医療法人の設立段階で都道府県知事による開設者の確認や非営利性の確認が行われる制度設計となっています。ところが一般社団法人は登記のみで設立できる準則主義の法人であり、設立段階での非営利性の確認が行われません。
また、医療法人は事業報告書等の都道府県知事への届出(医療法第52条)などにより、行政庁による定期的な運営実態監視が行われますが、一般社団法人では同様の監督制度が設けられていませんでした。
この制度設計の差が、一般社団法人による医療機関開設が急増した理由のひとつでもありました。
今回の改正の本質
「一般社団法人による開設を禁じる」ものではありません。医療法人と同水準の開示や非営利性確認を、一般社団法人にも広げるものです。医療法人同様に、継続的な確認制度が創設されることとなります。
2. 医療法人との違い
2-1. 制度比較(医療法人 vs 一般社団法人)
医療法人と従来の一般社団法人で主な制度を比較すると、以下のようになります。
| 項目 | 医療法人 | 一般社団法人(従来) |
|---|---|---|
| 設立 | 都道府県知事の認可 | 登記のみ |
| 役員 | 原則理事3人以上・監事1人以上(1人医療法人を除く) | 理事1人以上・監事は任意 |
| 代表者要件 | 理事長は原則、医師・歯科医師 | 要件なし |
| 残余財産 | 国・地方公共団体等に帰属 | 定款の定めに従う(通達による制限あり) |
| 事業報告書等の届出 | あり(医療法第52条) | なし |
| 経営情報報告 | あり(医療法第69条の2) | なし |
| 令和8年政令第25号 以降 | ― | 計算書類等の届出を義務化 立入検査等で非営利性が確認される |
3. 従来の一般社団法人制度との違い
3-1. 制度設計における空白
従来の一般社団法人立医療機関には、非営利性・監督の観点で主に3つの観点から空白が生じていました。
第一に、内部牽制の空白です。一般社団法人は理事1人でも成立し、監事を置かなくても適法です。理事長が唯一の理事であり、監事も外部の監視の目も届かない機関設計が可能な組織形態となっていました。一方、医療法人であれば、原則理事3人以上と監事1人以上が必要となり、監事は理事や職員を兼ねられません。
機関設計から、内部の相互牽制体制が異なってきています。
第二に、定款自治による空白です。主に、営利目的、剰余金配当、残余財産の帰属先、1社員1議決権の観点などにおいて、定款による別段定めが一般社団法人の制度上認められています。
これらは、医療機関の開設者向けに発出された通達で制約が課されていますが、医療法などの法令による制限ではなりません。さらに、一般社団法人では定款変更に行政の認可が法令上求められていない点からも事後的な監視の目が届きにくい制度となっていました。
第三に、報告制度の空白です。医療法人であれば、事業報告書等が毎年度都道府県に届け出られ、閲覧の対象となっています。
しかし、一般社団法人には届出義務は課されておらず、貸借対照表の公告義務のみで行政への報告義務は制度上求められていません。
3-2. 空白を埋めるための改正
これら制度上の空白を埋めるため、事業報告書等の届出義務新設と非営利性に関する発出済みの通達内容具体化による整理が行われます。
具体的には、次章で見る5つの確認ポイントにより、上記の空白に対応した制度改正が行われます。
4. 令和8年7月31日通知の内容と、5つの確認ポイント
4-1. 通知の位置づけ
制度の骨格は、医療法施行令の一部を改正する政令(令和8年3月11日政令第25号、令和8年4月1日施行)で定められました。これを受けて、都道府県等が確認するポイントを例示したのが、「一般社団法人が開設する医療機関の非営利性の確認のポイント及び医療機関を開設する一般社団法人が届け出なければならない計算書類等の様式等」 令和8年7月31日付 医政総発0731第2号・医政支発0731第3号です。
4-2. 5つの非営利性の観点
医療法人同様に、以下の5つの非営利性の観点から具体的な確認のポイントが定められています。
非営利性5つのポイント
4-3. 届出書類
医療法施行令第4条の7で定めに従い、医療機関を開設する一般社団法人は、毎会計年度終了後3月以内に、事業報告書・貸借対照表・損益計算書等を都道府県知事に届け出ることとなります。
本通知において、医療法人の事業報告書等と同様に事業報告書、貸借対照表、損益計算書、附属明細書、関係事業者取引報告書、財産目録、純資産変動計算書からなる報告様式が示されました。
なお、一部書類については、一定規模以上の法人のみの届出義務や任意要件として定められています。
届出の開始は、令和9年4月1日以降となっています。
4-4. 実態調査
すでに開設している一般社団法人では、令和9年度以降、定款、開設時の届出内容変更時、立入検査時などに上記非営利性確認のポイントを踏まえた調査が行われる予定です。
なお、通知発出後に医療機関を開設する一般社団法人については、開設許可の申請時点から確認のポイントを踏まえた確認が行われます。
非営利性を満たさない、徹底されていないと解される場合、都道府県は開設不許可・改善措置命令・業務停止命令を行うことができ、当該命令に違反した場合開設許可の取消しや閉鎖命令といった行政処分を行い得るとされています。
5. まとめ
今回の制度改正は、一般社団法人による医療機関開設を否定するものではありません。医療法人と同様に、非営利性の徹底を求めるものです。
医療法人との違いは、設立時の許可や継続的な監督権の有無など制度設計の差にありました。今回の非営利性ポイントや届出義務化は、その差を埋めるものです。
非営利性の観点では、都道府県による命令等強い権限が認められることになり、持続的な運営にあたってはポイントを十分に押さえた慎重な整理が重要となってきます。
届出の観点では、期日内に多数の書類を作成・報告する必要が生じており、事前の準備が重要となってきます。
いずれも対応に時間がかかることが想定され、事前の計画的準備が必要です。
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