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連載「社会福祉法人会計基準の改正(令和9年4月施行予定)」第2回
新リース会計基準は社会福祉法人に適用されない|通知のリース規定の見直しと実務への影響
一部の株式会社などでは、令和9年4月1日以後に開始する事業年度から、新しいリース会計基準が原則適用されます。これまで費用処理していた取引の多くが、貸借対照表に資産および負債として計上される大きな改正です。
社会福祉法人にも影響があるのかについて、令和8年9月30日の第6回社会福祉法人会計基準等検討会で示された改正案では、「新リース会計基準は適用しない」と整理されました。第2回では、その理由と、あわせて見直される通知のリース規定、仕訳例、公益法人・医療法人の取扱いを解説します。
この記事は、令和8年9月30日に第6回社会福祉法人会計基準等検討会で公表された改正案に基づいて執筆しています。実際の適用にあたっては、会計基準等をご確認ください。
新リース会計基準とは
企業会計基準委員会(ASBJ)は、2024年9月13日に企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」を公表しました。2027年4月1日以後に開始する事業年度の期首から原則として適用され、2025年4月1日以後に開始する事業年度の期首からの早期適用も認められています。
新しい基準では、借手はファイナンス・リースとオペレーティング・リースを区分せず、原則としてすべてのリースについて「使用権資産」と「リース負債」を貸借対照表に計上します。すなわち、これまで費用処理していた契約についても、原則として資産および負債を計上することになります。
社会福祉法人には適用しない方針
第6回検討会公表資料において、社会福祉法人では新リース会計基準について次のように整理しています。
- 社会福祉法人は、上場企業等と比べて取引の規模や複雑さ、利害関係者の範囲が異なり、企業会計と同じ水準の会計処理は必ずしも求められていない。
- 新リース会計基準を導入すると、法人の負担が大きくなることが想定される。
- そのため、新リース会計基準は適用しないと整理する。あわせて、「リース会計基準に準じて会計処理を行う」とする通知の記載を見直し、従来の処理のうち通知に明示されていなかった取扱いを追加する。
リースの処理を変えても資金収支には影響しないこと、計算書類の利用者が求める情報が企業とは異なること、オペレーティング・リースは現在も注記で情報を示していることなどが、適用しない理由として挙げられています。
なぜ通知の書き方を変えるのか
現行の課長通知では、リースについて「企業会計においてはリース取引の会計処理はリース会計基準に従って行われる。社会福祉法人においてもリース取引の会計処理はこれに準じて行うこととなる。」と定めています。
この書き方のままでは、新リース会計基準が適用されたとき、社会福祉法人も新しい基準に準じるのかという疑問が生じます。今回の改正案はこの一文を削り、社会福祉法人が行うべき処理を局長通知に明記することで、新リース会計基準が適用対象外であることを明確化させています。
通知の改正内容
| 改正箇所 | 現行 | 改正案 |
|---|---|---|
| 課長通知 20(1) | 企業会計のリース会計基準に準じて処理する旨の記載がある | この記載を削る |
| 局長通知 第8 1(1) | (規定なし) | リース取引の定義を置く(貸手が借手に物件を使用収益する権利を与え、借手がリース料を支払う取引) |
| 局長通知 第8 1(2) | ファイナンス・リースとオペレーティング・リースの定義 | ファイナンス・リースを、所有権移転ファイナンス・リースと所有権移転外ファイナンス・リースに分けることを追加する |
| 局長通知 第8 1(4) | リース資産の表示(有形・無形固定資産ごとに一括表示が原則) | リース債務の表示を追加する(貸借対照表日後1年以内に支払期限が来るものは流動負債、1年を超えるものは固定負債) |
| 局長通知 第8 1(7) | (規定なし) | リース資産の減価償却を追加する(所有権移転は自己保有の固定資産と同じ方法、所有権移転外はリース期間を耐用年数とし残存価額をゼロとする) |
次の取扱いは、改正後もこれまでと同じです。
- ファイナンス・リースは通常の売買取引に準じて処理し、オペレーティング・リースは通常の賃貸借取引に準じて処理する(局長通知 第8)。
- リース資産とリース債務は、原則としてリース料総額から利息相当額を控除した額で計上し、利息相当額は利息法で各期に配分する(局長通知 第8)。
- リース料総額300万円以下の少額のリースや、リース期間1年以内のリースは、オペレーティング・リースに準じて処理するなどの簡便な取扱いができる(課長通知 20)。
- リース資産総額に重要性が乏しい場合は、利息相当額を控除しない方法や、利息相当額を定額法で配分する方法を使える(課長通知 20)。
仕訳例で確認する
次の前提で、ファイナンス・リースとオペレーティング・リースの処理を確認します。
| リース物件 | 送迎用の車両(所有権移転外ファイナンス・リース) |
|---|---|
| リース期間 | 5年 |
| リース料 | 年額1,200,000円(毎年度末に支払い)、総額6,000,000円 |
| 利息相当額の計算 | 年3%で計算(仮定)。リース料総額の現在価値は5,495,649円 |
| その他 | 消費税は考慮しない。減価償却は定額法、円未満は四捨五入 |
原則的な方法(利息法)
| 時点 | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|
| 契約時 | 有形リース資産 5,495,649円 | リース債務 5,495,649円 |
| 1年目の支払い | リース債務 1,035,131円 | 現金預金 1,200,000円 |
| 支払利息 164,869円 | ||
| 1年目の決算 | 減価償却費 1,099,129円 | 減価償却累計額 1,099,129円 |
原則的な会計処理によると、資金収支計算書では、支払った1,200,000円のうち、利息相当額164,869円を「支払利息支出」(事業活動による支出)に、元本相当額1,035,131円を「ファイナンス・リース債務の返済支出」(施設整備等による支出)に計上します。
1年目の決算時点のリース債務の残高は4,460,518円です。このうち翌年度に支払う元本1,066,184円を「1年以内返済予定リース債務」(流動負債)に、残りの3,394,334円を「リース債務」(固定負債)に表示します。改正案で局長通知に明記されるのは、この区分です。
| 年度 | 期首残高 | 利息相当額 | 元本返済額 | 期末残高 |
|---|---|---|---|---|
| 1年目 | 5,495,649円 | 164,869円 | 1,035,131円 | 4,460,518円 |
| 2年目 | 4,460,518円 | 133,816円 | 1,066,184円 | 3,394,334円 |
| 3年目 | 3,394,334円 | 101,830円 | 1,098,170円 | 2,296,164円 |
| 4年目 | 2,296,164円 | 68,885円 | 1,131,115円 | 1,165,049円 |
| 5年目 | 1,165,049円 | 34,951円 | 1,165,049円 | 0円 |
| 合計 | - | 504,351円 | 5,495,649円 | - |
減価償却費は、リース期間5年・残存価額ゼロの定額法で毎年1,099,129円(最終年度は端数を調整して1,099,133円)です。
リース資産総額に重要性が乏しい場合
未経過リース料の期末残高が、有形・無形固定資産の期末残高との合計額の10%未満であるなど、リース資産総額に重要性が乏しい場合は、利息相当額を控除しない方法が適用可能です(課長通知 20)。この場合、契約時に有形リース資産とリース債務を6,000,000円で計上し、支払時は「リース債務 1,200,000円/現金預金 1,200,000円」、減価償却費は毎年1,200,000円となり、支払利息は計上しません。
オペレーティング・リースの場合
同じ条件の契約がオペレーティング・リースに当たる場合は、支払時に「賃借料 1,200,000円/現金預金 1,200,000円」と処理し、資金収支計算書では「賃借料支出」に計上して、資産と負債は計上されません。
新リース会計基準を適用した場合との違い
| 契約の種類 | 社会福祉法人(改正案) | 新リース会計基準(企業会計) |
|---|---|---|
| ファイナンス・リース | 売買取引に準じて、リース資産とリース債務を計上する | 使用権資産とリース負債を計上する |
| オペレーティング・リース | 賃貸借取引に準じて、賃借料で処理する。資産・負債は計上しない | 原則として使用権資産とリース負債を計上し、減価償却費と支払利息を計上する |
| 少額・短期のリース | 300万円以下、1年以内などは簡便な取扱いができる | 短期リース・少額リースの例外がある |
新リース会計基準ではオペレーティング・リースの扱いを中心に影響が大きくなりますが、改正案では、これまでどおり賃借料として処理できるため、実務上の影響は限定的となります。
公益法人・医療法人の取扱い
検討会では、通知に記載するリースの取扱いは公益法人会計基準や非営利組織モデル会計基準などを参考にしたとされています。
公益法人会計基準や、医療法人会計基準でも、ファイナンス・リースは売買処理、オペレーティング・リースは賃貸借処理という従来の考え方で定めており、社会福祉法人でも同じ考え方をとっています。医療法人のリースの取扱いは、医療法人会計基準について~その2(特殊な処理)~をご参照ください。
法人で確認しておきたいこと
新リース会計基準は適用されないため、処理を大きく変える必要はありません。ただし、通知に明記される取扱いと今の処理が合っているか改めて確認しておくことが望まれます。
よくあるご質問
- 問社会福祉法人も、新リース会計基準でリースを処理する必要がありますか。
- 答検討会の改正案では、社会福祉法人には新リース会計基準を適用しないとされています。従来の処理について局長通知に明記する案が公表されています。
- 問通知の改正で、今のリースの処理を変える必要はありますか。
- 答通知に明記されるのは従来の取扱いであり、原則として変える必要はないと考えられます。
- 問オペレーティング・リースは貸借対照表に計上しなくてよいですか。
- 答改正案においては、オペレーティング・リースは賃貸借取引に準じて処理し、資産・負債は計上しないとされています。解約できない契約は、未経過リース料を注記します。
- 問リース料総額が300万円以下のリースは、資産に計上しなくてよいですか。
- 答課長通知では、1件当たりのリース料総額が300万円以下の少額のリースや、リース期間が1年以内のリースは、オペレーティング・リースに準じて処理するなどの簡便な取扱いができるとされています。この取扱いは改正案でも残る予定です。
まとめ
社会福祉法人には新リース会計基準を適用せず、従来のリースの処理を続ける方針が示されました。改正の中心は、企業会計に準じるという記載を削り、社会福祉法人が従う処理を通知に直接書き込むことです。
処理が大きく変わることはありませんが、リース契約の管理や、減価償却、リース債務の区分、注記が通知どおりになっているかは、この機会に確認しておくことをおすすめします。
次回は、こども誰でも通園制度の勘定科目と、サービス区分間の繰入金・固定資産移管の科目の追加を解説します。