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連載「社会福祉法人会計基準の改正(令和9年4月施行予定)」第1回
社会福祉法人会計基準の改正案(令和9年4月施行予定)の全体像
厚生労働省の社会福祉法人会計基準等検討会は、令和8年9月30日に社福会計基準に関する改正案を公表しました。当該改正案では、令和9年4月1日から施行するとされており、新年度から新しい会計基準が適用される見込みです。
この連載では、検討会での議論内容をもとにして、改正の内容と、社会福祉法人がいまから準備しておくべき点を6回に分けて解説します。第1回は、改正案の全体像と、変わらない点、適用の時期を整理します。
この記事は、令和8年9月30日に第6回社会福祉法人会計基準等検討会で公表された改正案に基づいて執筆しています。実際の適用にあたっては、会計基準等をご確認ください。
改正案の全体像
第6回で示された改正案のうち、社会福祉法人に関わるものは次の7つです。改正の形式は、省令(社会福祉法人会計基準)、局長通知(運用上の取扱い)、課長通知(運用上の留意事項)、事務連絡(Q&A)に分かれます。
| 項目 | 改正の形式 | 内容 | 連載 |
|---|---|---|---|
| こども誰でも通園制度の勘定科目 | 省令(別表・様式)、課長通知 | 保育事業収入(収益)に、中区分「乳児等支援給付費収入(収益)」と、小区分「乳児等支援給付費収入(収益)」「利用者負担金収入(収益)」を追加する | 第3回 |
| サービス区分間の繰入金・固定資産の移管 | 省令(別表第二)、局長通知、課長通知 | 「サービス区分間繰入金収益・費用」「サービス区分間固定資産移管収益・費用」を追加する | 第3回 |
| 拠点区分事業活動明細書の様式 | 局長通知(別紙3(⑪)) | 経常増減差額より下の部分(特別増減の部、繰越活動増減差額の部)を加え、サービス区分間の繰入や移管を相殺消去できるようにする | 第4回 |
| リースの取扱い | 局長通知、課長通知 | 新リース会計基準は適用しない。「リース会計基準に準じる」とする記載を削り、所有権移転・移転外の区分、リース債務の流動・固定の区分、減価償却の方法を通知に明記する | 第2回 |
| 満期保有目的の債券 | 事務連絡(Q&A 問5を新設) | 全部を売却した場合も保有目的の変更に当たることを明確にし、資産の安全性の向上や保全のための入替えが例外に含まれることを示す | 第5回 |
| 偶発債務の注記 | 事務連絡(Q&A 問6を新設) | 「重要な偶発債務」の考え方と記載例を示す。記載例として、職員等の介護福祉士修学資金等の借入れに対する債務保証を掲げる | 第6回 |
| 社会福祉連携推進法人との資産の貸借 | 省令(別表)、課長通知 | 「社会福祉連携推進業務賃貸収入・賃借支出」「社会福祉連携推進業務賃貸収益・賃借費用」を追加する | - |
あわせて、省令の様式(資金収支計算書と事業活動計算書の各様式)も、追加される勘定科目に合わせて改められます。
変わらないこと
- 計算書類の体系は変わりません。資金収支計算書、事業活動計算書、貸借対照表と、附属明細書、財産目録を作成する枠組みはそのままです。
- リースの会計処理は、これまでと同じです。企業会計の新リース会計基準(借手がリースを使用権資産とリース債務として計上する方式)は取り入れず、従来の処理を通知に明記します。リース料総額300万円以下などの少額のリースを簡便に処理できる取扱いも残ります。
- 注記の項目は変わりません。満期保有目的の債券と偶発債務についてのQ&Aは、現行の規定の考え方をはっきりさせるもので、新しい義務を加えるものではありません。
社会福祉連携推進法人を除き、会計の根本的な考え方は変わりません。今回の改正は、こども誰でも通園制度の開始などの制度改正や、企業会計のリース会計基準の改正に合わせて、勘定科目や様式、通知の記載を整えるものが中心です。
いつから適用されるか
省令の改正案の附則には、「この省令は、令和九年四月一日から施行する。」と明記されており、令和9年度の決算から適用される予定です。
いまから確認しておきたいこと
今回の改正で、社会福祉法人の予算や会計に影響が生じてきます。主に次の5点を確認しておくことが望まれます。
| 確認すること | 該当する法人 | 連載 |
|---|---|---|
| こども誰でも通園制度を実施している、または実施する予定がある | 保育所等を運営する法人 | 第3回 |
| サービス区分の間の繰入や固定資産の移管がある | 複数のサービス区分がある拠点を持つ法人 | 第3回・第4回 |
| ファイナンス・リースの契約有無 | リース契約がある法人 | 第2回 |
| 満期保有目的の債券を保有している | 債券で資金を運用している法人 | 第5回 |
| 介護福祉士修学資金の借入れ等を、法人として保証している | 外国人介護人材などを受け入れている法人 | 第6回 |
よくあるご質問
- 問社会福祉法人会計基準の改正はいつからですか。
- 答省令の改正案では令和9年4月1日施行とされており、令和9年度決算から適用される見込みです。
- 問新リース会計基準は社会福祉法人にも適用されますか。
- 答改正案では適用しないとされています。従来のリースの会計処理について、局長通知に明記されています。
- 問こども誰でも通園制度の収入は、どの勘定科目で処理しますか。
- 答改正案では、保育事業収入の中に中区分「乳児等支援給付費収入」を設け、その下に小区分「乳児等支援給付費収入」と「利用者負担金収入」を置きます。
まとめ
今回の改正案は、会計基準を大きく変えるものではなく、制度の変化に合わせた勘定科目の追加と、これまで分かりにくかった取扱いの明確化が中心です。
一方で、予算や会計システムの設定、日常の会計処理や決算作業に影響が生じてきます。令和9年度の予算を組む前に、自法人に関係する項目を確認しておくことが大切です。
次回は、新リース会計基準を社会福祉法人に適用しない方針と、通知に明記されるリースの取扱いを解説します。